琅琊榜

琅琊榜西遊記 8 (『琅琊榜』)

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今回はワリとマジメな・・・・(嘘つけw)
すっかり「死にかけ」がデフォな宗主、これはこれで本人充実していることと思います。
心配はご無用です。
呆れながら見守ってやってくださいませ(^^;;;;

ちなみに、「言わん」と「結わん」がかかっていると共に、「誉王(ゆ-わん)」もかかってるじゃないか!と、書いてから突然気づいた遥華でした(笑)



 舞台裏では、さっきまで馬の前足と後ろ足を務めていた黎綱と甄平がほっと息をついていた。
 二人と入れ違いに、舞台へは哪吒太子役の庭生と、その父・托塔李天王役の百里奇が、慌ただしく舞台へ出て行った。
 「お疲れ様です」
 戦英が、いそいそと黎綱らに水を差し出す。
 「ああ、これは烈将軍。忝けのう存じます。しかし、此度は台詞のない役なので随分助かります」
 「ああ、そういえば先月は大変そうでしたね」
 戦英が気の毒そうな顔をした。
 「生きた心地も致しませんでした。将軍にもご迷惑をおかけして……」
と黎綱が言えば、
 「あれに比べれば、馬の脚はどれだけ気楽なことか……」
と甄平も溜息をついた。  
 「なるほど、それならばわたしと戚猛でも、なんとか務まりましょうか」
 戦英が不安げな様子で言ったので、
 「ああ、そちらも此度は……」
と黎綱がようやく思い出す。
 「はい。うまく出来るかどうか心許ないのですが……」
 ははは、大丈夫ですよ、と励ましてから、黎綱は大きく嘆息する。
 「それにしても、宗主のことが気がかりで。まことはとても舞台に立てるお身体ではないのですから」
 「心配ですね……」
と、戦英も共に肩を落とした。

 そこへ、飛流が梅長蘇を負ぶって舞台からはけてくる。
 「宗主!」
 飛流の背から降ろされた梅長蘇は、既にほとんど意識を失っているありさまだ。
 「しっかりなさってください」
 黎綱が護心丹を梅長蘇の口に含ませて、水を流し込む。ごくりと白い喉が上下した。
 うっすらと眼を開けた梅長蘇が、痩せた手を宙に差し伸べる。
 「悟空は……」
 朦朧として、虚実入り混じっている様子だ。
 「悟空は舞台の上です。牛魔王と戦っている最中ですよ」
 黎綱が答えると、梅長蘇が身を起こそうと踠く。
 「……わたしがついておらねば……牛魔王がどのような悪辣な手を使うか……」
 「ご安心ください。もはや芝居も終盤、牛魔王とていまさらどうにもできません」
 甄平が懸命に梅長蘇を宥めた。
 「しかし困りましたね。最後の場面にはなんとしても蘇先生に出ていただかねばなりますまいが……」
と戦英が案じれば、黎綱も助けを求めるように一同の顔を見回す。 
 「さすがにこのご容体では……」
 「おい。そろそろ牛魔王が調伏されてしまうぞ」
 戚猛が知らせに走ってきた。
 「もう間もなく、宗主の出番ではないか」
 黎綱と甄平が狼狽える中、戦英と戚猛が浮足立つ。
 「我々はそろそろ舞台袖に控えます」
 「ああ、頑張ってください。烈将軍」
 戦英たちと入れ替わりに、景琰たちが舞台裏へ駆け戻ってきた。
 「どうだ、小殊の具合は」
 「とても舞台を務めることなど……」
 皆、困り果てて顔を見合わせるばかりである。



   * 


 も―――、と牛が鳴いた。
 前足と後ろ足を務めるのは戦英と戚猛である。
 牛の着ぐるみの中で、戦英と戚蒙は押し合いへし合いしていた。
 「なんじゃあの牛は。よろよろしておるではないか」
 「托塔李天王に調伏されて、弱っているのでございましょう」
 観客にげらげら笑われながらも、戦英たちは必死である。
 「戚猛、押すな」
 小声で戦英が戚猛を窘めた。戚猛は後ろから戦英を小突きながら言い返す。
 「お前が愚図愚図しておるからいかんのだ」
 「とにかく、しっかり務めて時間を稼ぐのだ。少しでも蘇先生が回復して下さるように……」
 「わかっておるから、ふらふらせずにしっかり歩かんか」
 「うるさい。前がよく見えぬのだ」
 密かに罵りあいながら、戦英と戚猛はひたすら舞台上をうろうろしていた。



   * * *



 「……藺晨、あれを……。冰続丹を頼む……」
 梅長蘇が哀願する。差し伸べられた手を、藺晨はぴしゃりとはたき落とした。
 「莫迦なことを言うな。あれは力を奮い起こしはするが、その分、急速に命を縮める薬だぞ。 舞台が終わったあと、完全に力尽きてしまいかねん」
 藺晨の言葉に、景琰が目を剝いた。
 「蘇先生! そのような薬、飲んではならぬ!」
 語気も荒く窘めると、梅長蘇は微笑んだ。
 「わたしの命が縮むくらい、なんの障りがございましょう。殿下が陛下のご寵愛を賜る為であれば、それくらいどうということもございますまい……」
 景琰が梅長蘇の手を乱暴に掴んだ。
 「ならぬならぬ! 考えても見よ。今回限りの舞台ではないにだぞ。月例のこの芝居にそちがいなくてどうするのだ。この先もずっと私と共に舞台を務めてくれずになんとする!」
 「……この先も……ずっと……?」
 景琰の言葉を聞いて、梅長蘇は嬉しそうな顔をした。が、すぐにその表情が曇る。
 「殿下、されどこの不甲斐なき身では、今日の舞台を演じおおせることさえ危ういのでございます……」
 「なんの! 観客はそなたの美しい姿を見るだけで満足いたそう。そなたは舞台へ出てきてくれるだけでよい。あとはわたしに任せよ」
 涙を浮かべる景琰に、舞台をさがってきた戚蒙が告げる。
 「殿下、出番でございます。舞台へ」
 景琰は拳で涙をふいた。
 「うむ、わかっている。蘇先生。芝居もあと一息だ。蘇先生ならば必ずや演じきれよう。舞台で待っておるぞ!」
 そう言いおいて、景琰は駆け去っていった。
 藺晨は深々と溜息をついた。
 「あの莫迦猿め。病人を煽ってなんとするのだ。己の言葉が氷続丹をも凌ぐ劇薬とも気づかずに……」
 藺晨の言葉通り、景琰の励ましは梅長蘇を甚だ奮起させた。
 「……景琰、待っていてくれ……。必ずやこの舞台、演じきって見せるぞ……」
 その手に錫杖を掴むと、梅長蘇はそれにすがってぶるぶる震えながら体を起こした。
 「宗主!」
 「―――小殊!」
 皆が見守る中、梅長蘇はよろよろと立ち上がった。
 「今行くぞ、悟空……!!!」
 「ああ……、やはり宗主は焔の男であられた……」
 梅長蘇の背後にめらめらと燃え上がる炎を見た心地がして、黎綱と甄平が泣き崩れた。



   *



 よろめきながら梅長蘇が通りすぎた舞台の袖では、牛魔王こと誉王が悄然と立ち尽くしていた。
 「殿下、そのようにがっかりなさらずとも」
 般弱が懸命に慰めている。
 「―――とうとう、景琰から見せ場を奪う機会がなかった……」
 握りしめた拳を震わせる誉王に、舞台へ出てゆく梅長蘇を見送った藺晨が笑った。
 「まあ、そう嘆くな。初舞台にしては上出来であった」
 むっとした様子で、誉王がかうなだれていた顔を上げる。
 「河童めが、わたしを嘲笑っておるのか」
 憤然とした様子に、藺晨は苦笑した。
 「そう僻むな。誉めてやっているのではないか。なかなかの熱演であったぞ。靖王の素人くさい芝居より、よほどよい。助演男優賞ものだ」
 その言葉に、誉王はぽかんとした。
 「―――ま、まことか」
 誉王の頬が赤らむ。
 「わたしは世辞と坊主の髷はゆわん」
 「藺晨どの―――-」
 笑いながら立ち去る藺晨の背中を、誉王は呆然と眺めていた。





   * * *





―――次回予告―――



 「……悟空よ、泣くでない」
 「大雷音寺まで、この悟空が師父を背負ってまいりましょう!」
 「蘇先生にゆっくり養生してもらうためにも、次の脚本はわたしが手掛けようと思う!」
 「貴様のような四角四面な男に脚本など書けるものか!」

 
 いよいよ牛魔王編が幕を閉じる。
 どうなる、梅長蘇!? 次回もよろしく!
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~ Comment ~

ひいい(笑いが止まらない)

遥華さま

今夜も2本立て、楽しく読ませていただきました!
特に「公主抱き」の一言に、持っていかれました~~~~~!!
おっかしすぎます(爆笑)
そう言えば、ドラマでも、「靖王が宗主をお姫様抱っこ」のシーンを撮ろうとしたけど、胡歌さんが重くて不可能だったと、どっかで読みましたよ。

掛け合い漫才組も、梁の腐女子の方々も、本当にありそうで。
夏冬姐さんは、やっぱり飛流オシなんですね。
藺晨の急用って、「西遊記の全て」の発行か~(妙に納得)。
私も、全巻欲しいですっ(通販もありますか?)
白鳩印の売り上げには、全面的に協力いたしますよ~。

個人的な願望ですが。
私は、言候を父親に、藺晨を兄に、晏大夫を夫にしたいです。
大人の男の色気が大好物なのです。
ええ、ゲテモノ好きでも、変わり者でも、何とでも呼んでください(笑)
ただのオヤジ好きなので。
ついでに、玉ちゃんは叔父さんだといいなあ。

明日も楽しみにお待ちしております。

>>Rintzuさん

はい。リアルではどう考えても宗主のほうが靖王殿下より重量級ですからねww
厚みが違いますww

藺晨、ちゃんとお仕事してますでしょwww
白鳩印はますます肥え太りますw
きっと通販もあるでしょうw

晏太夫が夫!?
そ、それは盲点でしたwww
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