琅琊榜

琅琊榜西遊記――プロローグ―― (『琅琊榜』)

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これまた、昨晩Twitterで盛り上がったネタで遊んでみました。
オールキャストで臨みます。
今回はまたプロローグ・・・・


「蘇先生。相談があるのだ!」
 ある晩、景琰がそう言って訪ねてきたのだ。
 すっかり寝支度を整えていた梅長蘇であったが、すぐさま密道から景琰を招き入れた。
「そんなに慌てていかがなされたのです。もしやまた誉王殿下に何か無理難題でも?」
 そう問うと、景琰は苦り切った顔で頷いた。
 「そうなのだ。実は、言皇后の誕生日に、宴席で劇を披露せよと言われた」
 「劇? 芝居ですか?」
 呆れて梅長蘇は景琰の顔を見た。
 この堅物を絵に描いたような景琰に、わざおぎの真似をせよとは。それはあまりに無謀である。
 「うむ。わたしはろくに芝居など見ることもないゆえ、そのようなことは出来かねると固辞したのだが、皇后を祝う気がないのかと詰め寄られ―――、やむなく承諾したのだ・・・・・・」
 景琰が深々とため息を吐いた。
 「これはこの蘇某にも難題ですね・・・・・・」
 さすがに考え込んだ梅長蘇の手を、景琰は両手で掴んだ。
 「そこをなんとか頼む」
 手を握られ、間近で黒目がちの目に覗き込まれると、もう嫌とは言えなくなる梅長蘇である。子供のころから、従兄のこの目に幾度ほだされたことか。
 「・・・・・・考えてみましょう」
 やれやれ、と梅長蘇は息をつきつつ、その一方で既に景琰の晴れ姿を思い浮かべていた―――。



   * * * 



 翌晩、再び蘇宅を訪れた景琰に、梅長蘇は一冊の台本を手渡した。
 「『西遊記』だと? 聞いたことのない話だぞ」
 景琰が目を丸くする。
 梅長蘇はすこし得意になって答えた。
 「無理もありません。後の世に著される物語だそうですから」
 「後の世? そんなものをどうやって?」
 ぽかんとしている景琰に、梅長蘇は微笑む。    
 「琅琊閣の伝手を頼れば、それくらいは朝飯前なのです。これならば目新しゅうございいますから、誉王殿下の鼻もあかせましょう」
 「む。確かにそうだ」
 景琰が真面目な顔で納得する。
 「それではまず、配役から考えましょう」
 梅長蘇がそう言うと、景琰が少し赤くなりながら言った。
 「兄上はわたしに主演せよとの仰せであった」
 ああ・・・・・・、と梅長蘇がうなづく。
 「誉王は、殿下がしくじって恥をかくのを期待しておいでなのですね。―――主役となると、この孫悟空、ということになりましょう」
 梅長蘇の指が、台本の初めに書かれた角色の羅列を指し示した。
 景琰は台本に目を走らせて、眉をしかめる。
 「これは猿ではないか。わたしに猿を演じよと?」
 「猿は猿でも天上天下に敵なしという類まれなる猿です。見せ場も多うございますゆえ、役として不足はありますまい」
 涼しい顔で言ってのけた梅長蘇に、景琰はしぶしぶうなづく。
 「そうなのか。あとはどうする。靖王府の者どもを使うか」
 景琰がそう言った途端、慌てたように戦英が口を挟んだ。
 「殿下。わたしは裏方で手いっぱいになるかと」
 「戦英。まさか自分だけいち早く逃れようと言うのではあるまいな」
と景琰が眉を顰めかけたが、梅長蘇が戦英の言葉を引き継いだ。
 「確かに、烈将軍に裏方の差配をお願いできれば、まず間違いないでしょう」
 それを聞いて、景琰は甚く己を責めた。
 「許せ、戦英。そなたの忠心を疑ったわたしが愚かであった」
 「とんでもございません、殿下。舞台の上で殿下をお支えするのが誠の忠義やもしれませんが、この戦英、芝居には些かの覚えもなく、殿下の足を引っ張ることしかできそうにございませぬ。せめて、舞台裏のことは、命に代えても務めあげてお見せしましょう」
 ひれ伏した戦英の肩を抱いて、景琰はしばし涙にくれた。
 と。
 「殿下、わたしなら芝居心がありますぞ」
 そばでどんと胸を叩いたのは戚猛である。
 「どのような役なりとお申し付けください。なに、この戚猛がおれば小芝居の一つや二つ、大船に乗った気でおいでくだされ」
 からからと笑う戚猛を一瞥してから、梅長蘇と景琰は同時に台本に目を落とした。
 「―――殿下。靖王府の方々は武勇にこそ優れておいでですが、とても芝居をこなせるとは思えません。この際、江左盟からも人手を出しましょう」
 「うむ。それがよかろう」
 「それで、沙悟浄と八戒ですが……」
 額を突き合わせて相談を始めた二人の後ろで、戚猛が地団太を踏む。
 「殿下っ? 蘇先生!」
 そんな戚猛を振り返って、梅長蘇がにっこりと笑った。
 「戚猛どのには、是非とも大道具係をお頼みしたい」
 有無を言わせぬ微笑に、戚蒙も思わずうなづく。
 「・・・・・・あい分かった・・・・・・」



   *



 「それで、なぜわたしまで駆り出されるのだ?」
 腕組みしたまま、不快げな声で藺晨が言った。
 「よき人材がなかったのだ。文句を言うな」
 梅長蘇にそう言われ、藺晨は眉を寄せる。
 「なにゆえ河童なのだ」
 「いやならば豚にしよう。おまえは猪八戒だ」
 藺晨はしばし梅長蘇の顔を見、目を閉じた。
 「―――いや。河童でよい」
 満足そうに微笑んだ梅長蘇が言い添える。
 「沙悟浄の棲む河は砂の河ゆえ、河童ともいえまいよ。天界では大将を務めた男ではないか」
 「友情出演でよいから、せめて二郎真君あたりに・・・・・・」
 未練がましくそう言った藺晨に、梅長蘇は残念そうに首を振った。
 「二郎真君まで出す余裕がない。沙悟浄のほうが出番が多く目立つぞ」 
 「・・・・・・よかろう」
 ようやく承知した藺晨から、梅長蘇は蒙摯へと視線を移す。
 「では、蒙大哥。豚を頼む」
 「―――豚?」
 期待に目を輝かせていた蒙摯が、きょとんとする。
 「ぶ、豚なのか? ほかに、そのぅ・・・・・・」
 慌てて台本を捲る蒙摯の指を、梅長蘇の白い手がそっと止めた。つ、と蒙摯に寄り添うようにして、梅長蘇はしおらしく言う。
 「大事な役なのだ。この芝居は蒙大哥の肩にかかっていると言ってよい。貴方にしか頼めぬ・・・・・・」
 蒙摯の顔に、俄然やる気が湧く。
 「そ、そうか。小殊の頼みとあれば無論否やはないぞ!」
 「さすがは禁軍大統領。頼りになる」
 誉められてすっかりその気になった蒙摯が意気揚々と稽古場へ向かうあとへ続きながら、藺晨が溜息をついた。
 「長蘇。お前、徹夜で台本を書き上げただろう」
 梅長蘇はちらりと藺晨を見る。
 藺晨の言うとおり、一晩めに台本を書き上げ、昨夜はそれを数部書き写した。ほとんど眠ってはいない。
 「わたしのことはなんでもよくわかる男だな」
 「当たり前だ。今からそんな無理をしていては、皇后の誕生日までもたんぞ」
 「そのためにお前がいるのだろう?」
 ふわりと微笑まれて、ぐうの音も出ぬ藺晨である。

 「おおっ、靖王殿下は既に気合満点だな」
 前を歩いていた蒙摯が、稽古場に着くなり声を上げた。
 俄か作りの如意棒を振るっていた景琰が振り返る。
 「ああ、蒙大統領か。忙しいところをすまぬな」
 「哪里哪里。腕が鳴りますぞ」
 鎧を脱ぎ捨て、腕まくりをして、蒙摯もやる気満々である。
 景琰が梅長蘇の脇に入る藺晨に気づいて軽く微笑む。
 「琅琊閣の閣主どのまでご足労頂き、忝い」
 藺晨は面倒そうに顔を背けた。
 「素人ばかりでは心もとないゆえな。やむをえまい」
 「江湖の者ゆえ分をわきまえぬご無礼、どうかお許しを」
 藺晨の頭を押さえながら、慌てて梅長蘇が言い添えた。
 「いやいや。ところで蘇先生」
と景琰は特に気にした風もなく、台本の上を指さした。 
 「この三蔵法師という役だが、一体誰に・・・・・・」
 梅長蘇がすこし顔を曇らせる。
 「―――色々考えてみましたが、ふさわしき者が見当たらず・・・・・・」
 「困ったな。孫悟空の次に重要な役どころなのであろう?」
 景琰も思い当る人物がおらぬのか、難しい顔つきである。少し考えてから、梅長蘇は溜息をついた。
 「―――しかたありません。不肖ながら、この蘇某めが務めさせていただきましょう」
 景琰が目を瞠る。
 「蘇先生自ら!? それならば安心だが―――-、お体に障りはあるまいか」
 景琰の案じ顔に、梅長蘇が微笑む。
 「殿下の御為とあらば、この梅長蘇、身を削っても務めて御覧にいれましょう」
 「蘇先生・・・・・・」
 景琰は梅長蘇の手を取り、思わず涙ぐむ。
 藺晨は面白くなさそうに大あくびをひとつした。

 こうして、靖王と江左盟による『西遊記』の物語が始まったのである―――。




   * * *




―次回予告―


 「駄目です。全くなっていません。悟空はもっと粗暴で天真爛漫な猿なのですよ! 殿下の猿は堅すぎます!」
 「蘇先生! やはり私には無理だ!」
 「殿下には三蔵法師のほうが向いておいでになるのでは・・・・・・」
 まさかの配役変更か!?

 次回、刮目して待て!
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~ Comment ~

今度は西遊記!?

遥華さま

本当に、執筆スピード、ものすごく早いですね!!
ツイネタからの作品、明日も楽しみにお待ちしております~。

二次だと、登場人物がみんな幸せそうなので、嬉しいです。

>>Rintzuさん

こういうライトなやつは、キャラ設定のみ生かして物語の重たい設定は無視できるので
わたしのように無知な人間でも楽しく書けますww
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