琅琊榜

飛蝶3 『鬼患霍乱』 (『琅琊榜』#54以降補完)

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ややBL風味、チュウシーンありw

『歹人』のあとくらいの話を、軽めに書きました。
たまには藺×蘇でらぶらぶしたくて。
べつにエッチでもないし、内容は全くない、ただただ可愛くイチャイチャしてほしかっただけの話です♡


 鬼患霍乱とはよく言ったものだ。
 しばらくぶりに琅琊山を下りてきた藺晨は、廊州の屋敷に転がり込むなり、少し早めの夏風邪で寝込んだ。
 長いつきあいになるが、さて藺晨が臥せった姿など、見たことがあっただろうか。まあ、大抵は自分が寝込んでいて、人の体調まで気遣うゆとりなどなかっただけかもしれないが、と梅長蘇はひとり苦笑いする。
 「この数年、おまえにこき使われたせいだ。少しはいたわれ」
 えらそうな病人だとあきれるが、随分力になってもらったことには間違いがない。
 「おまえの我儘につきあっていたおかげで、琅琊閣のほうは人任せにしっぱなしだったからな」
 このひと月は働きづめだった、と不平をこぼす藺晨に、団扇でゆるゆると風を送ってやりながら、梅長蘇は嫣然と微笑んだ。
 「だから、どうしてほしいのだ?」
 仰臥した藺晨に顔を近づけて尋ねる。
 藺晨は少し眉をひそめた。熱で潤んだ目が、梅長蘇を見上げる。
 「おまえ。わたしを誘っているつもりか?」
 胸元を掴まれて、梅長蘇は笑った。
 「いかがわしい気持ちがあるからそう感じるのだろう? 相手が男でも女でも、見境のないやつだ」
 微笑んだまま、ぱしっ、と藺晨の手を払い落とす。
 「病人に対して随分な仕打ちだと思わないのか」
 不服を唱える藺晨に、梅長蘇はため息をついて見せた。
 「なにが病人だ。風邪くらいで大仰な」
 「病慣れしたおまえといっしょにするな。わたしにとっては一大事だ」
 病慣れとはまた失礼な言い方だと思うが、ほんとうのことだからしかたがない。
 「医者ならたまには患って病人の身になるといい」
 「你っ……」
 言い募ろうとして、藺晨はげほげほと咳き込んだ。
 さすがに気の毒になる。
 いかに丈夫な男とはいえ、自分の為にずっと無理を強いてきたのは確かだ。随分、心配もかけた。
 「蘇哥哥」
 そばで薬を煎じていた飛流が呼ぶ。
 「ああ、ご苦労だったな、飛流」
 藺晨の身体を起こしてやり、椀に注いだ薬を飛流から受け取る。
 「飲め。おまえの指示どおりに煎じさせた」
 藺晨は軽く薬の臭いを嗅いで、いやな顔をする。
 「ほんとうにわたしの指示した分量で煎じたのか? いやに濃いようだが」
 藺晨の目が疑わし気に飛流を見る。
 「合ってる!!」
と憤慨する飛流に肩をすくめ、しかたなさそうに藺晨は、椀を持つ梅長蘇の手の上に自分の手を添えた。
 その手が思ったより熱くて、梅長蘇はすこし眉をひそめる。
 が、薬を口にした途端、藺晨が喚いた。
 「なんだ、この苦い薬は!?」
 思い切り顔をしかめる。梅長蘇は吹き出した。
 「わたしはこの何倍も苦いのを、毎日何度も飲まされていたぞ?」
 「おまえは死にかけてばかりいたのだから、しかたあるまい」
 そう言って、藺晨は椀の中の残りをしぶしぶ飲み干す。
 椀を飛流に返して、梅長蘇は藺晨の口元を拭いてやる。
 すると、その手を掴まれた。
 やはり、熱い手だ。
 「大人しく横にならねば、ますます熱が上がるぞ」
 「わたしの処方した薬だ。ちゃんと効く」
 藺晨のもう一方の手が、梅長蘇の頬に添えられる。
 「おまえの肌は、ひんやりして気持ちがいい」
 そう言うと、藺晨の顔が近づいてきた。少し傾けたその顔が、鼻と鼻が触れ合うほど近くに迫る。
 藺晨の息が、熱い。
 顔を背けようと思えば簡単にできたが。なんとなく愛おしくて、梅長蘇はじっとしていた。
 唇が、触れる。
 唇も、熱かった。
 そして、やはり熱い舌が、梅長蘇の唇を割って押し入ってくる。歯列を上下に緩く開いて、それを受け入れてやる。
 微かに湿った音を立てて、藺晨の舌が蠢いた。自分もそっと舌で受け止めると、藺晨のそれがからみついてくる。
 眼の端に、飛流の顔が映った。不思議そうに、瞬きもせず見ている。
 「ん、っふ……」
 我ながら甘えたような吐息を漏らしてしまいながら、梅長蘇はやっと藺晨の身体を押し戻した。
 「……飛流が、吃驚している」
 少し目を伏せてそう言うと、藺晨は可笑しそうに飛流のほうを見た。
 「蘇哥哥を虐めているように見えたか?」
 藺晨の問いに、飛流は賢明に考えるふうだったが、しばらくして、ぶるぶると頭を振る。
 「蘇哥哥、気持ちよさそうだった」
 「飛流!」
 梅長蘇は柄にもなく、貌に朱を散らせた。
 藺晨が満足そうに笑って、もう一度軽く唇を吸ってくる。
 梅長蘇は恨めし気に、藺晨の顔を見た。
 「おまえ、自分だけ苦いのが嫌だったんだろう」
 藺晨の舌にはさっきの薬の味がまだ存分に残っていて、梅長蘇もその苦味を味わわされる羽目になったのだ。
 くすっと笑って、藺晨が抱きしめてくる。ぎゅうぎゅうと腕に力をこめられ、ゆらゆらと身体を揺すられた。
 「相変わらずおまえの身体はひんやりしていて、いい気持ちだ」
 舟を漕ぐようにゆったり揺れながら、藺晨は熱を持った頬を、梅長蘇の頬に押し付けてくる。
 「いいかげんにしろ」
 邪慳に言いながらも、梅長蘇は逃げようとはしない。
 以前のようなひどい冷えはなくなって、自分では決して身体が冷たいとは思わないが、熱のある藺晨には心地よいのだろう。
 しばらくそうしていると、やがて体の揺れが止まり、藺晨の寝息が聞こえてきた。
 そっとその身体を寝かせようとした梅長蘇は、夢うつつの藺晨に腕を引かれて、そのまま一緒に布団の上へ倒れ込む。
 藺晨の熱い腕に抱え込まれて、梅長蘇は小さく笑った。
 顔だけを傍らへ振り向けて、飛流を呼ぶ。
 「おいで」
 飛流は瞬きをしてから、―――にっこり笑ってうなづいた。






 「宗主はつきっきりなのか?」
 「飛流も部屋から出てこない」
 「宗主まで風邪をうつされはすまいな」
 「藺公子は丈夫なかたゆえ、どうせじきによくなられるだろうが、宗主はお元気になられたとはいえ、やはり心配だ」
 藺晨が聞いたら顔をしかめそうな会話を交わしながら、黎綱と甄平は部屋の戸を開けた。
 「あ」
 ふたりはしばらく、あっけにとられていた。
 大の字になって眠る藺晨の両脇で、梅長蘇と飛流も気持ちよさそうな寝息を立てて眠りこんでいる。

 「あーあ」と甄平が溜息をつく横で、黎綱が苦笑いした。
 大きななりをして子供のように眠りをむさぼる三人に、障子越しの夕日が柔らかく差し込んでいる。

 「……なんとも幸せそうだな」
 黎綱がそう言い。
 甄平も、肩をすくめてうなづいた―――。


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