古剣奇譚

白月 (『古剣奇譚 #6)

 ←誓い (『古剣奇譚』 #6 ) →砂の枷2 (『琅琊榜』『風中奇縁』)
2015年7月14日の作品。

『誓い』の直後の話です(大師兄×紫胤さま)。

タイトルが琅琊榜二次のほうとかぶっちゃってますねw


 あれほど触れることを畏れていた尊き身に、ひとたび触れたら歯止めが利かなくなった。
 膝立ちのまま、師の躰をきつく掻き抱くと、それだけで頭の奥が甘く痺れる。
 抑えきれず、師の首筋に浅い口づけを落とす。舌先が、その肌を絡め取りたがって蠢く。陵越の理性などお構いなしに。
 指先が、慎重に師の衿元を寛げていく。
 その気になれば、拒むことなど易かろうに。師は、氷のような静けさを湛えたままで、陵越のするがままに身を任せている。
 いっそ拒んでくれたなら、と陵越は思う。
 はねつけ、蔑んでくれたなら、自分はその場で蹲踞して赦しを請い、二度と師の気高い身に触れようとは思わぬはずだ。
 然るに、師はいともたやすく陵越を受け入れている。
 恐る恐る重みをかければ、師は黙ってその身を固い床の上へ倒した。

 いつからだろう。我知らず求めていた師の躰に、いま初めて触れて、陵越の中で何かが弾けた。求めていたことさえ、これまで気づかずにいたというのに。
 畏れと敬いとに戦きながら、露わになった胸へ恭しく口づけを落とし、白い肌に桃の花弁のごとき鮮やかな印を幾つも咲かせる。
 師は目を閉じて微塵も表情を変えず、ただ時折、咽喉をわずかにのけぞらせた。
 陵越は、師の肌を狂おしく貪り続けた。

 己の不遜な行為に、陵越は既に混乱し、恐慌を来している。
 今日まで、師の教えに背いたこともなく、ただ一筋に、敬い慕ってきた。まさか己が身の内に、かくのごとき妖しい炎が、潜み燻っていたとは、陵越はほんとうに知らなかったのだ。
 こんな冷たい床の上で、師の身体を凌辱する日が来るなどと、つい先刻まで思いもよらなかった。
 師の衣をもどかしげに剥ぎ取りながら、それでもまだ、今なら戻れるだろうかと、陵越はどこかでまだ希みをかけている。
 (それは、無理だ……)
 気づいてしまった欲望に、いまさら蓋などできはしない。

 師の胸から肩へ、肩から背へと、陵越は隈なく啄んだ。師は抗わずに床に伏せる。その背へ覆いかぶさり、肩に、肩甲骨に、歯を立てるうちに、陵越の昂ぶりはさらに増す。
 おのが指を口に含んで、しとどに濡らすと、陵越は師のもっとも尊き場所をまさぐり始めた―――――。






 小窓から射し込む白月の光に、陵越はふと目を覚ました。
 人肌の温もりが心地よくて、師の白い肩に、陵越はいま一度顔をうずめる。
 齢三百年を優に超えるとは思えぬ、切なくなるほど滑らかな肌だ。
 陵越は眉根を寄せて、その肌に舌を這わせた。
 紫胤が、わずかに睫毛を上げる。
 「……まだ足りぬのか」
 仰臥したままの師の、眼差しだけがこちらを向く。顔を伏せてはいても、陵越にはその視線が痛い。
 「お赦しください、師尊……」
 陵越は師の身体にしがみついた。

 若さに任せて、幾度となく師の身体を貫いてしまった。その荒々しい所業を、もはや自分で止めることが出来なかったのだ。
 師の肉に強く締め付けられる度に、陵越は獣のように吠えて、更に深く穿った。
 幾度も。
 幾度も。
 霊力を消耗した師の身を、あれほど案じていたというのに、気遣う余裕など微塵もなかった陵越である。

 白い身体を抱きしめて、陵越は啜り泣いた。
 その髪を、師が優しく撫でる。
 「気がすんだなら、それでよい」
 淡々としていても、どこか優しい声音である。
 陵越はようやく顔を上げて、師の顔をまともに見た。
 うっすらと隈の浮いた仄白い顔は、相も変わらず美しく気高い。
 陵越は身を起こし、衣を手繰り寄せて師の身体を覆った。
 己れもゆっくりと半身を起こした紫胤の姿は、やはり眩しい。冠は既に床に転がり、髷も解けて、しどけない風情だというのに、師の貴さは損なわれることがなかった。

 「浅ましい真似をいたしました」
 陵越はその場にひれ伏し、叩頭した。
 師に怒りや蔑みを向けられたとしても、自業自得である。
 が。
 「悔いているのか」
 低く問われて、はっとする。
 乱れた髪もそのままに、衣の胸元を掻きあわせた紫胤の姿が胸に刺さる。
 「いえ……」
 顔を上げ、陵越は思わずかぶりを振っていた。

 悔いてはいない。

 かくも幸福な時を、己れは知らなかった。
 求め続けたものを得た喜びは、何にも代えがたい。

 紫胤は、わずかに頷いた。
 「わたしはこれより又、禅房へ戻る。此度が三年に及ばなかったゆえ、次は少し長くなるやもしれぬ」
 「師尊……」

 ふと、理解した。

 閉関の行に入るその前に、師は、思いを遂げさせてくれたのではないか。

 立ち上がろうとした紫胤が、少しよろめく。 
 「師尊」
 慌てて自分も立ち上がり、陵越は師の身体を支えた。

 身づくろいを手伝い、自らも衣服を整える。
 髷が解けているのを除けば、師はもういつもの姿である。さっきまでその肌に触れていたのが、まるで夢のようだ。

 (しかし、夢でも幻でもない)
 師の与え賜うた僥倖を、胸にしかと刻んでおきたい。

 「陵越」
 不意に、師の指先が陵越の頬に触れた。
 髪を下ろした紫胤の顔は、常にも増して若く美しかったが、その眼差しは我が子を見るような慈しみに満ちている。
 「初めてここへ来たときには、お前もずいぶん幼かったものを」
 いくぶん誇らしげな師の声を、陵越は胸を熱くして聞いた。
 「次にお目にかかるときには、今度こそ師尊をお守りできるくらい強くなっております」
 頬に置かれた師の手に、自分の手を重ねる。

 紫胤は満足げに唇を綻ばせた。
 小窓から零れ落ちる月の光が、師の姿を青白く浮かび上がらせるさまに、陵越は暫し見蕩れる。

 「屠蘇と、天墉城をたのむ」

 見放されてもしかたがないと思っていた師から、後事を託された。陵越はぐっと眉間に力をこめる。

 師の言葉を、肝に銘じたい。
 次にまみえるその日まで。
  
 「陵越……明白」

 いまいちど、陵越は深くこうべを垂れた。 

スポンサーサイト

もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 琅琊榜
もくじ  3kaku_s_L.png 東離劍遊紀
もくじ  3kaku_s_L.png 古剣奇譚
もくじ  3kaku_s_L.png 花千骨
もくじ  3kaku_s_L.png 偽装者
【誓い (『古剣奇譚』 #6 )】へ  【砂の枷2 (『琅琊榜』『風中奇縁』)】へ

~ Comment ~

古剣奇譚だ~!

遥華さま

わあ、遥華さんの「古剣奇譚」だ~!!(今夜もPCの前でお祭り状態)
ずっと読みたかったのですが、どこへ行けば読めるのか分からなかったので、すごく嬉しいです!
これで、またあの世界にひたれます~。
大師兄×師尊さまのCP、アリですね(笑)。
遥華さんの作品は、濡れ場があっても、いやらしくないというか、何だかとても清い感じがします。
私はこんな風に書けません、すごいです。

「秀麗伝」、挫折しました(苦笑)。
「隋唐演義」の方が面白かったなあ。
「弘文学院」は順調に6話まで視聴済みです。
今日はダンナが同伴してくれて、楽しく観られました。
肩の凝らないコメディなのが、琅琊榜ロスに効くんですね。

明日もお待ちしております。

>>Rintzuさん

アカウントを変えたのには当時それなりの理由があったのですが、
今となってはあまり意味がない上に、色々めんどくさいので
たまたまツイのほうで古剣ネタが出たのを機会に、
ひとまとめにすることにいたしましたw

濡れ場はあってもエロくない・・・・
そう、これがわたしの長所(!?)でもあり、弱点でもあるのです(笑)。
お子ちゃまなのですよ、わたくしwww
どうもエロくならないwww

弘文学院、そうなんです、琅琊榜とは真逆の世界で
なんだかとてもホッとします。
でも、そんな中にもいろいろキュンとするところもあって、
だけど誉王妃だって小殊だって宮羽だって、みんな幸せで嬉しくなる(^^)

ホントだ!

誉王妃? 宮羽? 小殊?
…ああっ、ホントだっ、全員いる~!!!!!!(今さら気が付く)
しかもみんな楽しそう~(笑)
琅琊榜では、みんな苦労しましたもんね。

pixiv加入をダンナに反対されています。
どこで吐き出せばいいのでしょう…。
こんなR30指定(!)、腐りすぎてて公表できないよ~(T_T)
ええ、私が書こうとしていたのは、監禁・言葉攻めプレイでした(号泣)。
どなたかのツイに触発されてしまいまして…。
私が書こうとすると、AV並みになってしまうので、遥華さんの作風が清くて素敵だなあ、といつも思っています。

>>Rintzuさん

うふふ、琅琊榜で報われなかった皆さんも、こちらでは楽しそうでしょ(^^)

あらら、ご主人様に止められておしまいに!?
ウチは幸か不幸かダンナがネットに疎い人で助かっていますw
pixivがダメならブログででも何ででも!!!
楽しく吐き出してくださーい♡
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。
  • 【誓い (『古剣奇譚』 #6 )】へ
  • 【砂の枷2 (『琅琊榜』『風中奇縁』)】へ