琅琊榜

情人7 (『琅琊榜』 #52~54)

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52話以降は結構繰り返し繰り返し書いているので、端折ってしまいました。
『情人』はこれにて完結。
そして、このまま、次の藺蘇へと続くのです・・・・・・。


 天牢で落ち合った林殊は、蒙摯の屋敷で別れた時に比べて随分元気そうに見える。
 かつて祁王が囚われていた『寒』の牢をふたりで訪れ、宿願成就の決意を新たにした。
 この場所で、誓いたかったのだ。謀略の渦に飲み込まれて散っていった者たちの雪辱を、必ずこの手で果たすと。
 林殊を、安心させてやりたかった。病身に鞭打ってここまで進んできたこの友を、一日も早く。
 すでにこの身は皇太子である。これまで林殊は、智謀の限りを尽くして、献王や誉王の謀略から自分を守りぬいてくれた。献王と誉王の翼をもぎ、牙を折り、やがては彼らを自滅に追い込んだ。そのためには、林殊自身の情義に反することもやってのけてきたのだろう。全ては、この簫景琰の手を汚させぬために。
 自分に手を出させぬために、林殊は己の正体を明かすことさえしなかった。梅長蘇が林殊であると知れば、自分は必ず林殊の前に出て守ろうとしたに違いない。自らこの手を汚し、矢面に立とうとしただろう。それをさせぬ為に、林殊は病をおしてここまで耐え抜いてきた。
 だが、もうよいのだ。
 林殊はこうして、自分を皇太子にまで押し上げてくれた。政敵を払い、志ある者たちを選りすぐり、腐敗した朝廷を糺すためのお膳立ては全てやってのけてくれたのだ。
 今度は。
 いよいよこの自分が、表舞台での役割を演じる時が来たのだ。

 林殊は感慨深げに寒の牢を見渡している。
 かつてあれほど慕った祁王が、そして死力を尽くして戦った誉王が、自ら命を絶った場所。
 まるで景琰が目に入らぬかのように、林殊はただ立ち尽くしている。
 「小殊」
 少し苛立って、景琰は声をかけた。
 ようやく、林殊が振り返る。
 「ここしばらく、どうしていたのだ」
 あの時。
 蒙摯の屋敷の離れで過ごした四日目の午後。
 林殊は黙ってそこを去った。
 三日目の夜を共に過ごして、朝に参内した景琰が戻ると、既に林殊はいなかった。朝、別れるときに見た、林殊のこぼれるような笑顔と、無人の臥室が、どうしても結びつかずに困惑したものだ。
 蒙摯や戦英を使いにやっても、林殊は決して蘇宅から出ようとはしなかった。
 ―――それほど具合が悪いのか?
 そう尋ねても、蒙摯も戦英も首を傾げるばかりで埒が明かない。
 今日、言侯の誕生祝に招かれたとあって、ようやく林殊を捕まえることができたのだ。
 林殊が微笑む。
 「どうと言って‥‥‥。養生に努めていただけだ。最後の最後に寝込んでしまうわけにもゆかぬゆえ」
 事もなげにそう言って牢から出ようとする林殊の腕を、景琰は強く引いた。
 「そういうことを言っているんじゃない。わたしを避けていただろう?」
 出来れば言わずにおきたかった。病の身なれば、気のふさぐ日もあろう。互いにいい大人なのだ。五月蠅く付き纏おうとは思わない。今日、こうして会えて、共に思いを確かめ合えれば、それで構わないと思っていた。しかし、林殊のこの態度は。
 「何を怒っている? わたしが何かしたか? これまでのわたしの仕打ちが、やはり許せぬというのか?」
 林殊の両肩を掴み、強引に振り向かせる。
 林殊は微笑んだ。
 「おかしなことを。わたしは何も怒ってなどいない」
 そう言ってから、林殊は微笑を湛えたまま、少しばかり目を伏せた。
 「言ったはずだ。わたしは今、幸福なのだと」
 確かにあの時、林殊はそう言って口づけをくれた。あの言葉に嘘はなかったはずだ。
 「ならば、なぜ!?」
 思わず、林殊の身体を牢の堅い格子に押し付けた。
 景琰の胸と格子の間にひっそりとおさまった身体の薄さに、妙に血がのぼった。
 「小殊―――!」
 たまらず、顔をぶつけるようにして口づけていた。
 腹立ちまぎれに、無我夢中で林殊の唇を吸った。林殊が歯列を開く前に、無理矢理舌を捻じ込む。
 「‥‥‥っふ‥‥‥」
 林殊が苦し気な声を漏らしたが、構ってはいられなかった。一体、どれだけ我慢したと思っているのか。舌を強く絡ませて、強引に吸い上げる。淫らな音に、猶更昂ぶった。
 「―――んっ‥‥‥」
 唇の隙間から、息を吸おうとして林殊が喘ぐ。それを許してやる余裕など、景琰にはなかった。強く、さらに強く、景琰は唇を押し付け、ひたすらに吸った。
 いつの間にか林殊の四肢は力を失っている。両肩を鷲掴みにした手で、その細い体を吊り下げているような恰好になっていた。
 「―――小殊?」
 ぐったりした林殊に気づいて、景琰は慌てた。
 「小殊。おい」
 幾度も強く揺さぶると、ようやく林殊は眼を開けた。
 「‥‥‥景琰」
 「小殊!」
 力いっぱい、抱きしめた。
 「悪かった―――。苦しかったろう?」 
 その背を撫でながら、景琰は詫びた。抑えられなかったのだ。可哀想に、肩に指の痕がついたに違いない。
 ようやく膝に力を入れながら、林殊はゆるやかにかぶりを振った。
 「わたしがいけなかったのだ。せめて文のひとつでも書いていれば、お前をこんなに苛立たせることもなかった」
 そう言って林殊が、胸に頭をことりと凭せ掛けてくる。
 その声が悲しげで。
 わけが―――、わからなかった。




   * * *




 景琰の胸が、健やかな鼓動を刻んでいる。 
 その鼓動が、ひどく遠い。自分には、もう二度と得られぬ。
 夏江が言ったとおり、火寒の毒に冒された身は、今なお脈に乱れがある。静貴妃も、指先で軽く触れただけで脈の異常を見破った。それはすなわち、この命の果敢なさをも示している。
 林殊は景琰の胸に、頬を擦りよせた。
 景琰の胸は、―――やはり健やかな鼓動を刻んでいる。
 やがて若く健康で、清らかな皇帝となる。輝ける未来と共に。
 それに引き比べ、病みさらばえ、忌まわしい血の染みついたこの身に未来はない。
 景琰に寄り添って生きるのは、やはり若く健康な妃。
 
 あの日、己の中の悋気に気づいて、いたたまれなくなった。
 知られてはならない。―――そう思った。
 (もう一夜だけ)
 そう心に決めて、夜の褥に睦み合ったのだ。
 朝が来て、景琰を送り出した。髪を結ってはやれずとも、せめて笑顔で送り出してやりたかった。
 やがて、黎綱が迎えに来た。前の日の宵に、蘇宅へ使いを出しておいたのだ。
 あれ以上共に過ごせば、襤褸を出さぬ自信がなかった。気づかれぬうちに、離れなければ。そう思ったのだ。
 どうせ、あと少しだ。
 赤焔事案さえ片が付けば、自分は都を離れる。今度はもう、二度と戻ってくることは叶うまい。
 あと、ほんの少し。やり過ごせればそれでよい。
 なるべく会わずに過ごしさえすれば、きっと何ごともなく別れられる。これまでの長い年月を耐えられたのだ。しばらく会わずにいることくらい、なんでもないはずだった。この身が、景琰の肌の温もりを覚えている。それだけで残りの時を生きられようというものだ。
 
 屋敷に引きこもって、林殊は殊更日々を楽しんだ。
 藺晨や飛流との毎日には、否応なく笑いが零れ、心は安らいだ。
 ただ、時折やってきては景琰の言葉を伝えてゆく蒙摯や戦英だけが、―――林殊の心を乱した。
 幾度も、幾度も、景琰は渠らに言葉を託したのだ。
 『小殊、会いたい―――-』と。
 そして、今日。
 ―――口づけられればそれだけで、膝が砕けた。
 離れていれば、頭も冷えると思ったものを。
 離れていた分、狂おしいほど愛しかった。
 何を怒っているのか、と景琰は言う。
 怒ってなど、いない。
 いたたまれぬだけなのだ。
 怒っているとすれば―――、そんな自分に対してだろう。
 
 もう何も、景琰にしてやれぬ。
 既に、景琰の周りには、景琰の扶けとなり得る者ばかりを配した。お膳立てしたのはほかならぬ自分だ。自分が去ったあとも景琰が困らぬように。景琰の政を支えてくれる者たちで固めたのだ。
 間もなく、景琰は赤焔事案に手をつけるだろう。それが成し遂げられたなら。あとは、この身が去るだけだ。
 あれほど心に固く誓い、その為に身を削ってきた赤焔軍の雪辱―――、それがいよいよ成らんとするこの時、ひどく空しかった。
 



   * * * * *





 虚ろになった林殊の心に仄暗い火が点ったのは、大渝、北燕、夜秦、東海、それに南楚までもが、こぞって梁に攻め入る動きを見せたときである。
 すでに、赤焔事案は覆り、あとは都が落ち着くのを待って、廊州なり琅琊山なりへ旅立つ日を待つばかりであった。
 藺晨と飛流がその日を心待ちにしているのは知っていたが、林殊は既に身も心も燃え尽きようとしていた。
 周辺諸国が大梁に攻め入らんとしていると聞いたとき、林殊は奮い立つ思いだったのだ。

 己の望む、終焉。
 かつて父や同胞たちと共に守った、北の国境。
 その地で、散るのだ。
 祖国のため。民のため。
―――景琰のため。
 それはあまりにも甘美な誘惑で。林殊にとって、最後の希望の灯となった。

 まだ、出来ることがある。
 してやれることがある、景琰に。
 (お前の髪を結ってやることは出来ずとも。北の守りはわたしにしか出来ぬ)

 這ってでも、行こうと思った。
 かの地を守り、かの地に果てる。林殊はその思いに憑りつかれた。
 

 しかしながら。
 その願いは、当然のように、景琰にはねつけられた。
 どうしても行くというなら、医者の承諾を得てこいと。
 「小殊。行かせたくないのだ。そんな身体で」
 「身体は大丈夫だと言っている。必ず、医者の許しをもらってくる」
 藺晨ならば。
 きっと説き伏せて見せる自信がある。
 それなのに。
 景琰は憂いに眉を曇らせる。
 「小殊。どうしてわかってくれぬのだ」
 おまえこそ―――、と林殊は思った。
 (どうして、わかってくれぬのだ)
 これが最後の、奉公なのだ。
 主と定めた景琰への。
 友であり。
 従兄弟であり。
 臣であり。
 情人である己が。
 最後にたったひとつしてやれること。 
 景琰の始める政の、礎となって果てる―――。それくらいのことは、させてくれてもよいではないか。

 「―――景琰。この戦が終われば、今度こそほんとうにわたしは都を去る。その前に、ふたつ、願いがあるのだ」
 林殊は景琰の顔を見つめた。
 幼いころから見慣れた、凛々しい眉。黒目勝ちの大きな瞳。この顔が喜怒哀楽にうつろうさまを、自分ほど知る人間はほかにはいまいと思う。かつても、いまも、また、これからも―――。
 「ふたつ?」
と景琰は聞き返す。
 林殊は微笑ってうなづいた。
 「ひとつは、この戦で大渝を任せてもらうこと。いまひとつは―――」
 「いまひとつは?」
 心持ち首を傾げた景琰の頬に、掠めるような口づけをして、その耳元に囁いた。
 「最後に、もう一度だけ―――」
 「小殊」
 はっとしたように、景琰が顔を見る。林殊は目をそらせ、低く請うた。
 「一夜だけ、―――わたしの為に、時を割いてほしい」
 「‥‥‥小殊」
 泣き出しそうな景琰の顔が、愛おしかった。
 「わたしの望みは、そのふたつだけだ。それさえ叶えば、―――何も要らぬ」
 命など、くれてやる。
 万感の想いをこめて、林殊は景琰の顔を見つめた。
 景琰は瞳を揺らせ―――。
 そしてついに、細くため息をついた。
 「わかった―――。ひとつめの願いは、医者の許しが出てからだ。ふたつめは―――」
 「ふたつめは―――?」
 すこし、身体がこわばった。このところ、景琰を避けていたのは自分のほうだ。今更こんなことを言い出すなど、虫が良すぎる。
 この望みが受け入れられずば、なんとしよう。都に思いを残すことになりはすまいか。
 林殊は少し目をそらせて、景琰の言葉を待った。
 ふたつめは―――、と今一度景琰が言った。
 「―――今宵、すぐにもかなえてやれる」
 「景琰―――」
 強く、抱きしめられた。
 受け入れて、くれるのだ。
 この身勝手な自分を。
 見放さずにいてくれる。

 嬉しかった。

 嬉しくて、涙が出た―――。



   *


 
 これが、最後だ。
 全て、刻み付けたい。
 景琰の唇のやわらかさ。舌の動き。
 肌を甘噛みされた時の心地よさ、
 もっと。
 もっと。体中に口づけの痕を残してほしい。生涯消えぬ、赤い花を散らしてほしい。
 もっと。体中が疼くほどに。
 景琰の長い指が、身体を這う。
 下腹の茂みを探る指の動きを、決して忘れはしないだろう。そして―――。
 「ああ‥‥‥ッ‥‥‥」
 熱を持ったそれを、やんわりと掌に包まれて、林殊は嬌声を上げた。




   * * *




 この夜の林殊は、思うさま、啼いた。
 常には声を漏らすことを恐れて、唇をかみしめ、時に自分の拳を噛んで耐えていた林殊が、この夜ばかりはあられもなく声をあげ、身悶えした。
 梅長蘇の清楚な姿の奥に、これほどの熱を秘めていたのかと思うほど、林殊は昂ぶり、乱れた。
 「小殊―――-」
 病んだ身体が、壊れてしまいはせぬかと気が気ではなかった。
 「よせ、小殊。わたしまで、歯止めがきかぬ―――」
 林殊の昂ぶりに、当然、景琰も熱くなる。労わりたいと思うのに、どうにもならなかった。
 林殊の烈しさと梅長蘇の慎ましさ、林殊の奔放さと梅長蘇の艶かしさ、それらがないまぜになり、時に景琰と叫び、時に殿下と啼き、景琰の心をいやがうえにも乱した。
 梅長蘇であり、林殊であるこの男。今宵一夜で、全ての顔を見せてくれようというのか。
 細い腰が淫らにくねり、いつもはすがる力さえ弱い林殊の指が、景琰の肩に、腕に、食い込んだ。
 まるでこの一夜に、命の限りを注ぎ込もうとしているかのような林殊に、景琰もまた全霊で応える。
 「小殊―――、小殊―――」
 「―――景‥‥‥琰っ‥‥‥ああッ‥‥‥」
 ひとつに。
 身も心も。
 『先生とわたしは一心同体』
 その言葉に、いま、全く偽りはなかった。
 肉と肉が繋がり、心と心が融け合って、ひとつの熱い塊になっている。
 「景琰―――、もっと!」
と林殊が叫んだ。
 もっと深く。
 林殊の奥の奥まで―――。
 道なき道を分け入るがごとく。

 誰も知らぬ林殊の最奥で、景琰はありったけの思いをほとばしらせた。





   * * * 



  

 寝衣を申し訳程度に身に纏うと、牀台から転がり落ちるように降りて、林殊は膝で這った。
 近くの壁にすがってやっとの思いで立ち上がる。閨房からまろび出ると、待っていた戦英の腕に倒れ込んだ。
 「蘇先生!」
 狼狽する戦英に、林殊は言った。
 「身仕舞いを。景琰が目覚めぬうちに!」
 語気も強く言い放ったつもりだったが、一晩声を上げ続けた喉は涸れて、ひどく掠れていた。
 閨の前で寝ずの晩をしていたらしい戦英には、昨夜の嬌声は全て聞こえていたに違いない。
 困惑しながらも、戦英が身体を拭き清め、衣を着せてくれる。
 「―――先生、ほんとうに戦においでになるのですか」
 少し、とがめるような眼差しで戦英が言う。
 長椅子に身体を投げ出して、林殊は力なく笑った。
 「知っているだろう、大渝との戦にわたしほど適した者はおらぬ」
 「されど‥‥‥」
 戦英の困り顔を見られるのも、もうあとわずかだ。その顔をしげしげと見て、林殊は苦く笑った。
 「うらやましいな、おまえが」
 「わたしが?」
 少しきょとんとした戦英の表情は、どこか少年じみている。それでいて、老成しているようにも見えるその顔に、林殊は微笑ってうなづいて見せる。
 「おまえは生涯、景琰のそばに仕えることができる―――」
 「―――先生」
 戦英が眉尻を下げてつらそうな顔をした。
 「次に生まれ来るときは、列戦英に生まれよう」
 そう言って笑うと、戦英は今にも泣きそうな表情になる。
 「蘇先生―――」
 林殊はすこし目を伏せ、それから面持ちを改めて戦英を真っ直ぐに見た。
 「列戦英」
 その声音に、戦英も「はっ」と居ずまいを糺して膝をついた。
 「わたしにかわり、この先もずっと簫景琰を護れ。生涯共にあって、その生を見届けよ」
 頭を低く垂れた戦英の肩が、ぴくりと動いた。
 「―――承知。列戦英、林少帥のお言葉しかと承りました」
 顔を上げた列戦英は、すでにさっきまでの心もとなさを拭い去っていた。毅然としたその面に、林殊は心から安堵する。
 これで思い残すことはない。
 安心して、旅立てる。
 林殊は微笑し、戦英の肩を借りて立ち上がった。



   *



 数日ののちである。
 林殊は戦列と共に金陵の城門を潜った。
 二年前は、馬車の帷の内にあってこの門を入った。今日は馬上に甲冑を身に纏うて出て行く。ちょうど十四年前のあの日のように。
 この国のため、大渝を降す、その覚悟と自信を胸に。
 ただひとつ、あの日と違うことがあるとすれば、此度は二度と戻らぬ旅立ちであるということ。
 あの日の少年は、思っていた。帰ったら景琰と酒を酌み交わそうと。今日は違う。これきり景琰にまみえることはないと、知っている。
 だが、林殊の心は萎れてはいない。まもなく皇帝となるであろう景琰に、平らかな国を捧げるために。その一端を担うため、自分は北へと向かうのだ。
 誇らしさで胸がいっぱいだった。
 寂しさは、不思議に無い。
 この身と心に、景琰を刻み付けたのだから。
 貴き身に抱かれ、慈しまれた。
 充分、幸福であったと思う。

 (景琰。やがてお前の統べるこの国は、この世のいずこよりも美しかろうな)
 
 馬上から、林殊は目に見える限りの風景を見晴るかした。

 わが国、大梁。
 わが主の、治める国。
 
 城門の外に広がる広野を、朝陽が眩しく照らしていた―――。 
 
 
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~ Comment ~

NoTitle

うわああん、切ないよう~。
でも、林殊である梅長蘇なら、こうするだろうと思います。
最後の一瞬まで忘れないように、愛する人の思い出を刻んでいくのですね。
そして、戦英、なんてデキるイイ奴なんだ~。

琅琊榜は、登場人物の一人一人が本当に魅力的で、脇役でさえもしっかり描かれているのが、やっぱりすごいと思います。

あっ、もう次がアップされてる!!!!
見に行きます!

>>Rintzuさん

戦英はほんとにデキるやつですよね!!
景琰の周りは高潔で仕事のできるキレ者揃い、
宗主も安心できることでしょう。
ってか、宗主が身を削ってそのようにお膳立てしたわけですが・・・。
ほんとは靖王目線でのラストも・・・と思ったのですが
ちょっと蛇足になりそうだったので省きました。
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