琅琊榜

毒蛇15 『胜负』 (『琅琊榜』 #42~46 補完)

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毒蛇15 ちょっとBS放送を追い越しちゃうけど、アップしておこう・・・・w

 誉王謀反の知らせがもたらされた時、梅長蘇の胸は高鳴った。まるでその時を、待ち焦がれていたかのように。
 ―――やはり、来るのだ。あの男は。
 そう思うと、居てもたってもおれぬ気持ちになった。
 このことを知らせるために童路は犠牲となり、甄平は危険を冒して九安山へと馬を駈ってきたのだ。その苦労を思えばもちろん胸は切り裂かれるように痛んだが、それよりも尚、いよいよ誉王が立ち上がったのだという現実に、梅長蘇は感動さえしていた。
 
 予測はしていたのだ。
 何か事を起こすならば、都が手薄になるこの時しかないと。
 大ごとにはならぬまでも、この『梅長蘇』を葬り去るための行動くらいは起こすに違いないと。
 それゆえ、蘇宅を出るときに、黎綱らに言い含めたのだ。邸を引き払えと。
 たとえ誉王の手のものに押し入られても、靖王府への密道を閉じ、邸がもぬけの殻となっていれば、手も足も出まい。何の痕跡も残してはならぬと。
 しかし、それだけではすまなかった。
 誉王はついに、父皇に反旗を翻したのだ。

 あれはまだ、梅長蘇が都にのぼって、さほど時もたたぬ頃。
 濱州事案で慶国公を救わんと頭を痛めていた誉王に、皇帝に背いてはならぬと諭したことがあった。あの時、誉王は眉を逆立てて反論したものだ。自分は父に対して二心ないのだと。
 あれは恐らく、真実であったと梅長蘇は思う。誉王は帝位を欲してはいたが、父に背く気は毛頭なかった。
 その誉王をして、謀反に駆り立てたのは―――。ほかならぬ自分だ。
 自分が誉王を追い詰めた。

 ふと、思う。
 自分が都に戻ってこなければ。

 誉王は父皇譲りの賢王よと誉めそやされて、いずれはまことに東宮位につくことが出来たやもしれぬ男だ。父皇と母后に孝養を尽くし、寵臣らにかしずかれ、やがて威風堂々たる皇帝となり得たのだ。
 その男を、帝位に手の届く高みから引きずり下ろし、追い詰め、ついには逆徒とならしめた。
 かたや、父皇から冷遇はされつつも、権謀術数渦巻く朝堂に関わることもなく、ただ己の身の丈にあった日々を淡々と送ってきた景琰を、帝位への厳しく血なまぐさい道へと追い立てたのもまた、自分であった。

 自分はこの手で、従兄たちの未来を塗り替えてしまった。
 その思いは、これまでも常に梅長蘇の中にくすぶっていたのだ。

 (わたしのしたことは―――)
 果たして正しかったのか?

 梅嶺で。
 自分が同胞たちと共に果てていたならば。
 今も皇宮の中では一年半前と同じ情景が、日々繰り返されていただろう。
 民は疲弊し、朝廷は腐敗し、ゆっくりとこの国は死に向かっていたかもしれないが、それでも人々は変わらず日々を送ってたことだろう。

 それではいけなかったのか?と思う。
 自分が梅嶺での恨みを晴らし、理想とする国を作り上げたいと望んだばかりに、多くの者たちを巻き込んだのだ。
 神ならぬこの身が目指したものは、―――大それた望みであったのだろうか。
 
 いや、と梅長蘇は瞳を伏せた。
 ここで今更、二の足を踏んでどうなるのか。
 既に、後戻りのできぬところまで来てしまったのだ。

 この国を憂えるなら、悪しき流れは断たねばならぬ。
 正しき政を取り戻さねばならぬ。
 自分にはこうすることしかできなかったのだ。
  
 自分が誉王のさだめを変えたのであれば、せめて見届けてやるまでだ。その結末を。
 自分が景琰の未来を歪めたというのなら、せめて用意してやるのだ。新しき世の始まりを。
 
 ―――もうじき、誉王がやってくる。
 あきらめてくれることを祈りながら、誉王が再起することを、梅長蘇は心のどこかで望んでいた。
 自分の望み通り、誉王が挑んできてくれるならば、受けて立たねばなるまい、と梅長蘇は心を決めた。
 
  



   * * *




 造反することがかくもたやすいとは、と誉王は苦笑を禁じ得ない。
 これならばもっと早く、梅長蘇に身ぐるみはがされる前に蜂起していれば、帝位などいとも簡単に簒奪できたのではないかとさえ思える。
 (父皇に背く心があれば、とっくにそうしていたやもしれん)
 父を敬えばこそ、回りくどい争いを重ねてきたのだ。だが、それも今となっては徒労にすぎぬ。

 十年以上も争った献王の従兄弟・徐安謨が、慶歴軍五万を率いて自分についたことも、なんとも笑える話だと思う。靖王を逆恨みし、賤しく利に靡く、こんな薄汚い男でも都督などという身分と、五万もの兵を持つ。役には立つのだ。
 子供のころから機嫌を取り続けてきた言皇后も、今は自分の言いなりではないか。

 父は今、九安山にいる。
 蒙摯が禁軍を率いてそばについているとはいえ、たった三千の兵である。禁軍の主力は都にとどまり、言皇后の指示下にある。誉王の謀反を九安山に知らせる恐れはない。誉王は背後を脅かされることなく、悠々と都を出て、慶歴軍と合流したのだ。

 父も靖王も、もはや袋の鼠である。
 (梅長蘇。貴様もだ)
 敵となったあの男に、ついにこの手で引導を渡す。
 梅長蘇が夏江の手に落ちたときには、仏心が起きたものだが、いざ自分自身で追い詰めるとなると、心がひどく昂ぶった。

 三千に対して五万の兵でかかるのだ。よもや敗れることはありえない。いかに麒麟の才子といえど、此度ばかりはどうにもなるまい。
 

 そう思った矢先に、先陣からの伝令が駆け戻ってきた。
 先鋒五千が、蒙摯の手勢によって奇襲をかけられ、さんざんに蹴散らされたたというのである。
 景琰め、と腹が煮え立つ一方で、さすがは梅長蘇だと称えたくもなる。あの男がいればこそ、戦のしがいもあるというものだ。
 このまま一気に攻め込もうといきり立つ徐安謨を、誉王は押しとどめた。
 宿営を、とる。
 本体四万五千をもって九安山を攻め落とすのはたやすかろう。しかし、と誉王は思うのだ。それではあまりに芸がないではないかと。
 九安山には梅長蘇がいる。
 ならば。
 猫が鼠をいたぶるように、ゆるゆると時をかけて嬲ろうではないかと。
 梅長蘇もまた、知恵を巡らせ、応戦してくるに違いない。たった三千の兵を、どう動かそうというのか、見ものである。
 こちらは野営すると見せかけて、ゆっくりと敵の兵営を取り囲むのだ。夜が明けると同時に攻めかければ、よほど落としやすいというものだ。
 さすがの梅長蘇とて、あのひ弱な身体では眠りもせずに備え続けるわけにはいくまい。

 景琰、敗れたり。
 梅長蘇、敗れたり。

 誉王は、勝利を確信していた。


 

   * * *




 三日―――。

 景琰は、三日のうちに戻ると約束した。
 かつて『林殊』と景琰が見つけたけものみちを通ってこの九安山を下りたのだ。
 景琰が紀城からの援軍を連れ戻るまで、なんとしても三千の兵でもちこたえねばならぬ。

 一日目は奇襲で先鋒の出鼻をくじいた。
 そのまま本隊に攻め込まれれば危なかったが、誉王がなまじ策を弄そうとしたのが幸いした。
 (あなたはそういう男だ、誉王)
 九安山を目の前にして、誉王は攻め込まずに宿営をとった。攻撃を一日延ばすつもりかと、誰もが胸をなでおろす中、梅長蘇だけが誉王の心を察したのだ。
 一日与えてはこちらの守りが固くなることくらい、誉王とて百も承知である。宿営して攻撃を日延べすると見せかけて安心させ、明けきらぬうちに軍営を包囲し、夜明けともに一気に攻め落とそうとは、いかにもいやらしいやり口ではないか。
 梅長蘇は手勢を潜ませ、軍営を取り囲まんとする誉王の軍に打撃を与えた。
 二日目の夜は、夜陰に乗じて奇襲をかけようとした誉王軍の裏をかいた。
 軍営を、捨てたのである。
 そもそも、軍営のある草原は、攻めるに易く守るに難い。天幕には火薬をしかけ、奇襲部隊を引き付けてから火矢を射かけた。
 そうして二晩、敵の奇襲を退け、損害を与えはしたが、兵営を捨てた以上、いよいよ背水の陣である。

 誉王が数に物を言わせて、一日目に全軍で攻め込んできたならば、いかに梅長蘇とて防ぎようがなかったのだ。それを、策には策をと誉王は色気を出した。自尊心が強く、また体面を気にする誉王であればこそ、数ではなく智謀で勝ちを得ようとする。おかげで二日の時を稼ぐことができた。
 しかし、行宮は守りには適しているが退路がないのだ。たてこもり、もはや逃げ場とてない今日、夜まで持ちこたえることはかなうまい。
 味方の損害はここまで最小限にとどめてきたが、それでもまだ敵は此方の十倍以上の兵力を残す。戦場では鬼神のごとき働きを見せる蒙摯と、その渠が率いる精鋭たち、その中には江左盟の猛者もまぎれている。そうは言っても多勢に無勢なのだ、景琰が戻るまで、果たして持ちこたえることができるや否や。

 もはや自分には何一つできることはない。
 打てる手は全て打ったのだ。
 剣を振るうことも、弓を引くこともかなわぬ身である。あとは、兵たちがその身を賭して戦うのを、行宮の奥で息をひそめて見守ることしかできぬ。
 どれほどもどかしくとも、口惜しくとも。それしか出来ないのだ。

 宮門を破らんとする破城槌の音が、不気味に響いてくる。その音が続くうちは、いまだ禁軍が門を死守していることにほかならない。
 ―――宮門が破られても殿門があり、殿門が破られても、我らの身体がある。
 言侯のその言葉は、戦に慣れず浮足立っていた皇族たちに、不思議な力を与えたようだ。
 皇帝自らが剣を抜いて戦えという言侯の鼓舞に、日頃、皇宮の奥で惰眠をむさぼってきた男たちの血も、初めて目覚めたようであった。

 ―――最後のひとりまで、戦う。
 たったひとりの命でも永らえることができれば、黄泉の底からでも這い上がることができると、梅長蘇は誰よりも知っている。
 たとえそれが、死ぬよりつらいさだめだとしても―――。
 
 ひときわ高く、破城槌の音が肚の底に響いた―――、かと思うと、それぎりその響きが止んだ。
 ―――宮門が、破られたのだ。

 いよいよ来る―――。
 宮門内での死闘が始まっているのだ。
 行宮の前では豫津や宮羽も剣を取って戦っていることだろう。豫津には飛流をつけてあるから幾分安心だが、飛流とて不死身ではない。

 庭生の幼い身体を抱き寄せて、梅長蘇はただ信じた。
 もうじき、景琰が必ず助けに戻ってくることを。

 かつて梅嶺で―――、林殊は胸の内で景琰に助けを求めた。景琰が梅嶺におらぬことにほっとしながら、それでもなお、心は景琰を呼び続けた。無駄と知りつつ。
 ―――あの時とは違う。
 景琰は約束したのだ。必ず三日で援軍を連れて戻ると。
 景琰を信じて待つことは、今度は無駄ではない。
   
 だが―――。
 景琰の到着は、そのまま誉王の敗北となるのだ。

 倒さねばならぬ相手とわかっていても、相反する思いに、梅長蘇の心は乱れた―――。

 そして、梅長蘇の耳に、勝利をもたらす蹄の音が届いたのだ。
 遠く、遥かに。
 援軍が、ついに到着したのである―――。




   * * * 




 靖王はこちらの本隊を攻め、既に本陣へと迫っているという。
 五万の兵が、たった三千の敵を破れなかったのだ。
 所詮はにわか仕立ての軍勢である。己を心服してついてきた者たちではない。劣勢と見るや、たちどころに総崩れとなったのであろう。
 あれほど目をかけてやった灰鹞も、既に陣を見捨てていずこへか姿をくらませたという。
 情けなくて、涙も出ない。
 怒りで、目の前が真っ暗になった。

 背水の陣で臨んだ戦である。
 後戻りのできぬ闘いとわかっていながら蜂起したのは、勝算があったからである。

 いや―――、と誉王は奥歯を噛みしめた。
 勝算があろうがなかろうが、そんなことはどうでもよかったのだ。ただ、父皇に牙をむかずにはいられなかった。泣き寝入りして靖王に膝まづいたのでは、己の半生が悲しすぎるからである。
 
 身の処し方を、考えるいとまもなく、靖王とその手勢に天幕を囲まれた。
 ―――万事休す。
 誉王は剣を引っ提げ、誉王の前へ進み出た。

 こんな日が、来ようとは。
 思いもしなかった。

 麒麟の才子を得る者、天下を得る―――。

 江左の梅郎を得たのは己であると、信じて微塵も疑わなかった。
 (―――完全に、してやられた)
 目の前の靖王の背後に、梅長蘇の影が見える気がした。麒麟の才子は、この男のものなのだ。
 悔しさに、喉元まで熱い塊がせりあがる。
 なぜ、と少年の日から何万回繰り返したかわからぬ問いを、誉王は胸の内に噛みしめる。
 (なぜ、わたしではないのか)
 祁王の寵愛も、梅長蘇の忠愛も、なにゆえ自分ではなく靖王に注がれるのか。自分はそれほどまでに、この男に劣るというのだろうか。
 降伏せよと、靖王が言う。
 何を小癪な、と怒りに胸が震えた。

 誉王は剣を抜き放った。
 剣を抜いたところで、今更どうなるものでもない。戦慣れした靖王に、かなうべくもないのだ。
 よしんば靖王に一太刀浴びせたとして、それが何になろう。忽ちの内に取り押さえられ、とらえられることに何の変わりもない。
 そうと知りつつ、それでも剣を抜かずにはいられなかったのだ。

 憎い、と思った。
 心の底から、憎んだ。

 自分から、全てを奪った弟。

 兄を、父を、位を、誇りを、そして―――梅長蘇を。
 



   * * *

 


 行宮から眺める月も、これが見納めである。
 明日には都へと戻る。

 危機は脱した。
 この先、景琰を阻むものは何一つない。
 皇帝の景琰への信頼は、ゆるぎないものとなったであろう。

 (何のためらいもなく兵符を返せる律儀者は、景琰くらいのものだろうからな)
と、梅長蘇は苦笑した。
 紀城の軍を呼びに行くため、皇帝から預かった兵符。あの兵符さえあれば、大梁の全軍を掌握することができる。
 靖王から兵符を求められたとき、皇帝の心には迷いがよぎったに違いない。
 景琰は、すでにかつての冷遇された群王ではない。今の景琰が兵符を手にすれば、誉王の謀反など問題にもならぬほどの力を得る。
 景琰に頼るしかないと知りながらも、疑い深い皇帝は迷ったに違いないのだ。
 兵符を質にすれば、どんな望みでも皇帝に強要できるはずであった。
 親王の身が願うべきことといえば、無論、次の皇帝の座にほかならないのだ。だが、景琰には、この機に乗じて兵符を利用しようなどという気は毛頭ない。
 (景琰にはもとよりそんな欲はあるまい)
 梅長蘇もまた、そんな形で景琰に皇帝の座を掴んでもらおうとは思わない。簒奪した位ではならぬのだ。正々堂々と東宮位を得て、やがて何の瑕も穢れもない皇帝とならねばならない。
 景琰の潔さに、―――皇帝は感動すら覚えたに違いない。
 帝位に欲をかかねばこそ、景琰は帝位にまた一歩近づいたのだ。

 (誉王には逆立ちしてもできぬ芸当だろう)
 そう思うと、溜息が出た。

 この月を、誉王は夜露に濡れながら見ているのか、と胸が痛む。
 毎夜、絹の褥で眠っていた皇子が、今は野営の牢の中で膝を抱えているのかと思うと、気が滅入った。
 皇帝は、誉王に誰も会わせてはならぬと命じた。梅長蘇のほうも、ようやく巡り合えた戦友・聂锋の世話にかまけて、誉王を気にかけるいとまもなかった。聂锋もまた、自分と同じ火寒の毒に侵されていたからである。そして梅長蘇自身も体調を崩し、結局誉王のもとを訪れることはいまだかなわぬままである。

 もし今、あの男と相まみえたならば。
 自分はどんな顔をし、何を話そうというのだろう。
 勝敗はすでに決した。
 もはや、自分と誉王は、敵同志ですらないのだ。
 今さらどんな言葉をかわそうというのか。
 梅長蘇は月の光に目を細めた。

 同じ月を見て、誉王は何を思うのだろう。
 哀れであった。

 (あの男もまた、わが従兄には違いないのだ)
 自分にも同じ、簫家の血が流れている。
 
 ―――元は家族だ、と紀王は言った。
 庭生のことを言ったのはわかっているが、果たしてそれだけだったかどうか。
 紀王は聡い。人はあの外見に惑わされるが、紀王の真実を見抜く力は、言侯に勝るとも劣るまい。
 (見破られたやもしれぬな)
 梅長蘇は苦笑した。
 だが、紀王は決して漏らすまい。
 表立って助力をしてくれることもあるまいが、足を引くこともない。そういうお方だ、と梅長蘇は思う。決して障りにはなるまい。

 そういえば豫津も‥‥‥、と梅長蘇はまたひとり笑みをこぼした。
 豫津もまた聡い。言侯の血を引き、紀王に可愛がられて育った豫津は、洞察力に優れ、身の処し方も上手い。
 梅長蘇は近頃、あえて豫津にほのめかすのだ、林殊の影を。豫津は果たして気づくだろうか? そうと察しても、気づかぬふりをするだろうか。弟子を試す師の心持ちで、梅長蘇は豫津の反応を楽しんでいる。

 行宮は、静かだ。
 傷ついた兵たちの呻き声も、梅長蘇の居室までは聞こえてこない。医官らも疲れ果てて休息をとっているのか。
 景琰も、すでに眠りについただろうか。

 元はみな、家族であったのだ、と。
 梅長蘇は紀王の言葉を噛みしめる。
 幼かった日に戻れたならば。
 皇帝の膝で遊び、紀王に抱き上げられ、祁王に手を曳いてもらったあの頃。
 誉王もまた、家族であったのだ。

 あの頃から再びやり直せたならば。
 誉王の生き方は、別のものになっていただろうか。

 梅長蘇は目を閉じた。
 瞼の裏で、幼い林殊が少年だった誉王に手を差し伸べた。

 ―――景桓哥哥
 そう呼んでやったなら。

 少年は微笑み返してくれただろうか。 
 「小殊」と。


 ―――月の光が、梅長蘇の濡れた頬を、白々と照らしていた。  
 
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