琅琊榜

茸茸  (『琅琊榜』 #1 以前 補完)

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藺閣主とふっさふさ時代の宗主のSS

 「勿体ないな」

 藺晨はそうつぶやいて、回廊の端に腰かけて、日だまりの中でうとうとしている梅長蘇を、しげしげと見た。

 『梅長蘇』。
 本人はまだ、その名にあまり馴染んでおらぬ様子だが。藺晨は既にすっかり梅長蘇を気に入っている。

 父親同士が親友であったからには、林殊という人間を、知らぬわけではなかった。
 それでも・・・・・・。

 藺晨は、そっと手を伸ばす。
 ふさっ、とやわらかい毛並みに指先が触れた。
 白い睫毛が、ぱちりと開く。
 「……?」
 切れ長の目が、不思議そうにこちらを見た。

 この白い生き物があの林殊であるという実感は、藺晨にはなかった。
 ゆったりとした部屋着を纏っているが、体中が真っ白な長い毛に覆われているからには、べつだん衣など要るとも思えぬ。むしろ、毛皮のままのほうがずっと美しいのに、と藺晨は思う。

 そして。

 ええい、ままよ、と藺晨は梅長蘇に抱き着いた。
 一度やってみたかったのだ。
 「……ッッ!?」
 大きな生き物に見えるが、ふわふわの毛並みの下の身体はほっそりしていて、存外簡単に組み敷くことができた。
 衿を左右に大きく開くと、白いふさふさした胸が露わになる。藺晨はそこへ顔を埋めた。
 日だまりの匂いがする。
 わさわさと首筋のあたりに指を挿し入れて掻きまわすと、梅長蘇は低く喉を鳴らした。

 「……このままでいろ」
 梅長蘇の腹に馬乗りになったまま、藺晨は言った。
 梅長蘇は一瞬目を見開き、それから脚をばたつかせる。
 「いや、じっとしていろという意味で言ったんじゃない。この姿のままでいろと言っている」
 「?」
 白い毛におおわれた顔の中、知性的な目が、困惑したように細められる。
 「うぉ……」
 「我?」
 梅長蘇の眸に、悲し気な色が浮かぶ。
 「うぉ……、ぶ……」
 かぶりを振る梅長蘇に、藺晨は小さくため息をついた。
 「もういい、わかった」

 藺晨は梅長蘇の身体から降りると、手を曳いて起こし、襟元を直してやった。
 「じきにこの姿も見納めか」
 藺晨は懐から櫛を取り出した。梅長蘇の髪を梳いてやる。雪のように白い髪は、どこまでが髪でどこからが体毛かよくわからなかったが。

 この白くて綺麗な獣がどうなってしまうのか。藺晨にも実はよくわからない。
皮が、肉が、骨が。一度滅びて蘇る。考えるだにおぞましい。
 この美しい毛皮を失って、藺晨が見も知らぬ、当たり前の人間として生まれかわるのだ。
 確かに人がましい姿と声とを取り戻すには違いないだろう。しかし、その代償はあまりに大きい。
 返す返すも残念だ。

 毎日毛皮を梳いてもやろうのに。
 毎日、血を吸わせてやってもかまわぬのものを。

 「勿体ないな」
 もう一度そうつぶやく。
 梅長蘇の決心が揺るがぬと知っていながら。

 午後の日差しを浴びて、雪白の毛並みが艶々と輝いている。
 せめてこの心に刻み付けておこうと、藺晨は目を細めた。



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~ Comment ~

Re: NoTitle

私は基本的に藺×蘇で、でも靖×蘇(蘇×靖かな)もアリなんですが、
靖王と宗主のからみがあまりに少ないので、うまく話にできなくて、
どうしても少年時代の景琰と林殊・・・になりがちです。
だって皇太子になると同時に密道完全に閉じちゃったし。
まあ、藺×蘇も、本編の内だと一緒に過ごす時間あんまり長くはありませんが。
琅琊閣→廊州時代を妄想しますw

茸茸・・・・なんて読むのかしらw
中国語でロンロン・・・・
フサフサとかフカフカとかって感じです。
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