琅琊榜

启程

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藺晨、長蘇をハネムーンに誘う!?
『愛上你』のあとくらいかな? 前半は『愛上你』より少し前ですが。


 最初の躓きは、思いもよらぬことだった。
 あれはまだ、包帯がとれたばかりの頃のことだ。
 具合のよい日は、読書をして長蘇は気を紛らせる。ふと思いついたことを書き込んでおきたくて、茶を運んできた黎綱をさし招いた。
 「・・・・・・な・・・・・・らい・・・・・・」
 以前に比べてかなり舌が動くようになったが、それでもまだすらすらとは言葉が出てこない。
 「な・・・・・・らい・・・・・・やん・・・・・・」
 「拿来・・・・・・?」
 黎綱が少し首をひねる。長蘇が辛抱強くもう一度同じ言葉を繰り返すと、ようやく黎綱は「ああ」と膝を打った。
 「硯。すずり、ですね?」
 こくこく、と長蘇は頷いた。今のところ、言葉がすんなり伝わるのは老閣主や藺晨、そしてこの黎綱ぐらいなものだ。ほかの者では、何度も何度も問い返されて、長蘇のほうが疲れ果てるか癇癪を起すかのどちらかである。
 それでも随分、進歩はしたのだ。根気強く努力すれば、床離れする頃にはかなり会話ができるに違いなかった。
 黎綱が硯を持ってきて、墨を摺ってくれる。
 墨を摺り終えた黎綱を下がらせて、さて、梅長蘇は思案した。
 まだ、火寒の毒を抜いてから、一度も筆を持ったことがない。身体じゅうの激痛で、箸や匙すら持てなかったのだから、当たり前だ。

 火寒の毒は、皮膚や肉は愚か、骨まで侵す。その毒を抜くのは、容易なことではない。毒に侵された部分は、全て取り去らねばならぬ。皮を剥ぎ、肉を削ぎ、骨を削る。毒を抜いて、人らしく生きるためには、命さえ削る必要があったのだ。
 長蘇の場合は、毒は第三層にまで及んでいると老閣主は言った。あきらめよ、と。そう言われた。
 誰があきらめるものか、と長蘇は思ったのだ。あきらめられるはずがない。すべてを白日の下にさらす日まで、自分にはなすべきことがある。なんとしても、都へ戻って、真実を明らかにせねばならぬ。
 老閣主は深いため息をひとつついて、長蘇の望みを受け入れたのだった。

 覚悟はしていたが、それからの苦しみは筆舌に尽くしがたかった。
 いまだに身体は常に重く、鈍い痛みが全身に残っている。どうかすると激痛に襲われることもあるが、いつまでも他人任せというわけにもいくまい。
 第一、代筆してもらうにしたところで、口で言葉を伝えるのも骨が折れる。それなら、自分で書いたほうが早いと思ったのだ。
 近ごろは自分で箸も持てる。箸が持てるならば、筆とて持てぬ道理はない。筆を取り、その穂先を紙面に下ろそうとして、長蘇は少し戸惑った。力加減が、わからぬのだ。
 最近まで長いこと包帯に包まれていたせいで、感覚が鈍って筆をうまく持てぬだけかと思いはしたが。
 長く筆を持ち上げていることがつらくなって、手が震える。長蘇は、思い切って筆先を紙の上へ下ろした。
 べたり、と紙面を墨が汚す。筆の穂は腰までぐにゃりと折れて、書物の文字を大きく塗りつぶしてしまった。
 長蘇は眉をよせ、歯を食いしばった。こんな簡単なことが、なぜ出来ぬのか。
 筆を持つ指も、己の手を支える肘も、ろくに力が入らない。ちびちびと食事をする箸の運びより、文字を書くのはよほど骨の折れる仕事であると、ようやく思い至った。
 悔しくて、情けなくて、黒い墨のしみの上に、涙がひと粒ぽとりと落ちた。


   * * *


 「なんだ? この下手糞な字は」
 部屋中に散乱している反故紙を一瞥して、歯に衣着せず藺晨はそう言った。
 文机の前に座っていた長蘇が、顔を上げてこちらを睨みつけてくる。
 「腹を立てているのか? 下手糞だから下手糞と言ったのだ。何が悪い? このひどい文字を見て、上手い上手いと見え透いた世辞を言われても、それはそれで腹が立つだろう?」
 長蘇の目に、悔し涙が盛り上がる。が、それをこぼしはしなかったのは立派と言えよう。
 「―――へたくそ、だから、けいこ、している」
 たどたどしい口調で、長蘇が言った。言葉のほうは、このところ進歩著しい。本人はまだまだ歯がゆいようだが、随分聞き取りやすくなったと思う。
 ―――とはいえ。この文字はひどすぎる。
 少帥を止めてください、と黎綱に泣きつかれた。仕事を中途で投げ出して覗いて見れば、この有様だ。これでは体に障ろうというものである。まだ身を起こしているだけでも辛いはずだというのに、一体どれほどの間、こうして紙と筆を相手に格闘しているのか。
 「一度に沢山書いたからといって、急に上達するものでもあるまい」
 ここまでひどいからには、一朝一夕に以前のごとく書けるようになるとはとても思えぬ。今無理をしたところで、疲れ果てて寝込むのが関の山だ。
 そんなことは、恐らく本人とて百も承知だろうに、何もせずにはおれぬのだろう。
 かつて出来ていたことが出来ぬというのは、ひどく心細いものに違いない。
 藺晨は屈んで、散らばった反故紙を一枚一枚拾い集めた。下手糞には違いないが、一文字一文字努力して書いたのだと思えば、いじらしかった。
 紙をまとめて傍らへ置くと、藺晨は長蘇のすぐ後ろに座る。
 長蘇の背中を抱くようにして、藺晨は前へ右手を伸ばした。
 その手で、長蘇の利き手を包み込む。
 「・・・・・・」
 長蘇は黙ってされるがままになっている。
 「手伝ってやるから、今日はこの一枚で終わりにしろ」
 藺晨の言葉に、長蘇はすぐには答えなかったが、それでもしぶしぶ浅くうなづいたようだった。
 『金陵』と、藺晨は長蘇の右手ごと、筆を動かした。
 長蘇の、生まれ故郷。
 そこで生まれ、そこで育ち。幼き日の美しく温かい思い出に満ちていたであろう場所。
 そして、いつか長蘇はそこへと帰る。
 その日のために、今は身体をいとえと、―――そう思いを込めた。
 最後の払いを穂先を整えながら丁寧に終えて、藺晨はそっと長蘇の手を持ち上げてやる。筆が無事に、紙から離れ、た。 
 「焦らずゆっくり感覚を掴めばいい」
 細い指から筆をとって硯の上へ置くと、藺晨は長蘇の身体を引き寄せた。
 長蘇は素直に身体を預けてはきたが、それでも腕の中でゆるく首を振った。
 「・・・・・・いそぐ―――。ゆっくりなど、できぬ・・・・・・」 
 細い声が、まだ呂律の怪しい口調でそう言うのを、藺晨は切ない思いで聞いた。



   * * *



 季節が変わった。
 回廊の縁に腰かけて、長蘇は足をぶらつかせていた。
 近頃、ようやくこうして一日起きて過ごせるようになったのだ。
 毎朝、黎綱がきちんと身仕舞いを整えてくれる。
 林殊であった頃とは違う、いかにも書生然とした衣を長蘇はいくつか選んでいた。以前は、こうしたずるずると動きづらそうなものは好まなかったが、今はこのほうが都合がよい。貧弱な身体を覆い隠してくれるし、ゆったりとして楽だ。いまだに少しばかり身体が疼く長蘇にとっては、有り難かった。火寒の毒は取り除かれても、寒気に冒された身は今もひどく冷たい。この格好であれば、重ね着したとて目立たぬのもよい。中身がひどく痩せているせいで、さほど着膨れして見えることもなかった。
 (それに・・・・・・)
と、思う。
 いずれ都へ戻るのは、林殊ではなく梅長蘇だ。完璧に、別人を演じねばならぬ。もはや武人たりえぬ身であるのも、むしろ好都合というものだ。
 顔かたちも変わり果てた。
 (こんなひ弱な男がかつての林殊だなどと、誰も思いはすまいが)
 装いも、言葉遣いも、物腰も、改める。
 昔の林殊の痕跡は拭い去らねばならない。
 長蘇は、そっと袖をたくしあげた。
 青白い細腕が現れる。
 長蘇は嘆息した。
 もう二度と、剣をとることも、弓を射ることもかなうまい。
 梅長蘇であることに、慣れねばならぬ。
 長蘇は、自分の手を眺めた。
 肉の薄い、それでいて女のように滑らかな手だ。かつてあれほど鍛練した面影など、どこにもなかった。
 (父上の授けてくださった武芸は、全て消え失せてしまいました)
 長蘇は、空しく微笑んだ。
 父は、厳しかった。
 それこそ、血と汗と涙を流して、林殊は精進したものだ。少しでも気を緩めれば、忽ち罰を与えられた。あの辛い鍛練で得たものが、今は跡形もない。
 そうして、今は。―――生きているだけでも難儀な身体だ。
 以前のような激痛はなくとも、五体は常に鈍い疼痛に苛まれ、四肢に力は入らず、少し動けば息が切れる。
 (これが、梅長蘇だ)
長蘇は、小さく笑って空を見上げた。
 「父上。貴方の小殊は、かような姿となり果てました」
 ―――これでも、貴方の息子といえますか。
 ―――これでも、赤焔軍の少帥として、まだ戦えますか。
 時折、心折れそうになるのだ。
 こんな身体で、ひとり生き残ったとて、何ほどのことが出来ようかと。一日も早く、父や仲間の名誉を取り戻したい。皇宮に巣食う卑怯な者たちを一掃して、出来ることなら我が友・景琰にこの国を託したい。そうは思えど、気ばかり急いて、身体はまるで思うように動かぬのだ。
 「少帥。そろそろ風が冷たくなって参りました」
 背中に、黎綱の声がかかる。
 春だと言うのに、琅琊山の夕風は長蘇の痩躯に堪えた。
 長蘇は短くため息を漏らしてから、振り返った。
 「少帥ではないと、何度言えばわかるのだ?」
 そう言って微笑んで見せると、黎綱は自分の口を押えた。
 「ああ、つい・・・・・・」
 老閣主はいつの間にか琅琊閣から姿をくらましていたが、置き土産として長蘇に江左盟を託して行った。
 「宗主、とはまだ言い慣れぬものですから」
 「呼んでくれねば、わたしも慣れることができぬ」
 苦笑した長蘇を、黎綱はぼんやり眺めている。
 「どうした?」
 「いえ、その」
 黎綱は、慌てて視線を自分の足元へ落とした。
 「随分、お変わりになられたので」
 その言葉に、長蘇は少し呆れた。今更この顔のことを言うのか、と。
 しかし、黎綱はあたふたと付け加えたのだ。
 「いや、お顔が、ではなく。・・・・・・その、物言いや立ち居振る舞いが」
 「―――ああ」
 当然だ。そのように振る舞う努力をしているのだから。それに―――。
 以前のように振る舞いたくとも、出来るはずがないではないか。
 馬を駆ることも、屋根へ舞い上がることも出来ぬ。回廊から庭先へ飛び降りることすら出来はせぬのだ。物言いとて、つい最近までは舌がろくに動かず、ようやく言葉を発せられるようになっても、ゆっくりとしか話せなかった。それが習い性となってしまったのだろう。
 「わたしを林殊だと思うから戸惑うのだ。新たな主に仕えたと思え」
 すれ違いざま、黎綱の額をぺしりと叩いてやる。
 痛っ、と漏らしてから、それでも黎綱は少し嬉しそうな顔をした。
 「そういうところは、やはり少帥でいらっしゃいます」
 「うるさい」
 林殊の昔を知る者が傍にいてくれることは、辛くもあったが、やはりほっとできる面もある。黎綱と甄平の存在には、随分助けられているのだ。そうでなければとっくに。心くじけていたに違いない。

 そんな時だ。
 旅に出ようと、藺晨が言った。


   * * *
  

 「ほう。これはまた、水茎の跡麗しいな」
 藺晨は、文机に向かっている長蘇の手元を覗き込んだ。
 わずか二、三か月前にはあのひどい文字であったのだ。ここまで書けるようになるには涙ぐましい鍛錬があったのを藺晨は知っている。文字の書けぬことから始まって、長蘇はひとつひとつ、躓いては立ち上がり、懸命に乗り越えようとしてきた。
 
   戚戚苦無踪
   攜手共行樂
   尋雲陟纍榭
   隨山望菌閣

 「なんだ? お前が詠んだのか?」
 「いや、たまたま目にした詩を書き写してみただけだ」
 そう言って振り返った長蘇の顔は、物静かな笑みを湛えていたが。

   戚戚として[[rb:踪 > たの]]しみ無きに苦しみ
   手を携へて共に行楽す
   雲を尋ねて累榭に陟り
   山に随ひて菌閣を望む

 戚戚苦無踪。さもありなんと思う。この明るい春の日に、重い荷を負い、病んだ身を抱え、この深山に息を潜めているのであってみれば。
 「ふん。それほど気がふさぐならば、出かけてみるのも悪くはないな」
 長蘇がわずかに目を瞠った。
 「出かける? どこへ?」
 藺晨は眉を上げて見せた。
 「どこでもよい。旅に出るのだ」
 長蘇が、今度こそ驚きに目を丸くする。  
 「どうだ? 行くか?」

 まだ早い―――、それは充分にわかっていた。
 長蘇は、床離れしていくらもたたぬ。長旅に耐えられる身体だとは藺晨も思ってはいない。だが。
 (いつならばよい? ひと月先か。半年先か。それとも、一年待てばよいのか?)
 そうではあるまい、と藺晨は思った。
 長蘇の病は癒えぬ。自分が精魂込めて治療を施せば、常の暮らしに障りのない程度には保てようが、それとてだましだましの生活だ。すっかり元気になることなど、金輪際、望むべくもない。
 ならば、今でも同じではないか、と思うのだ。
 長蘇の心は、常にぎりぎりのところにある。
 あれほど快活であったものを、このような山深い場所に長く留まれば、気も腐るは道理である。自由に空を舞っていた鳥を籠に籠めれば、いかに手厚く世話をしたとて、心を病んで死んでしまう。長蘇を、そのような目には遭わせたくなかった。  
 都人であった林殊は、知るまい。江湖は広いのだ。
 長蘇の父・林燮は、務めの合間に名を変え、江湖を渡り歩いた。しかし、長蘇はまだ、その経験に乏しい。林燮は琅琊閣と都の間を行き来するときには息子を伴ったが、それ以外では一人で動くことが多かったのだ。
 「江湖の味を覚えさせては、鍛錬に身が入らぬようになるに決まっておるゆえな、あの莫迦息子は」
 林燮は、藺晨にそう言って笑ったものである。
 今ならば、と思う。
 今の長蘇には、江湖の風が必要だ。
 翼を傷めた鳥に、いまひとたび広い空を与えてやらねばならぬ。ひとりで飛べぬ鳥ならば、自分が翼になってやればよい、と藺晨はそう思ったのだ。

 「どうなのだ? 行きたいか?」
 重ねて問うと、長蘇は眼差しを泳がせた。
 「わたしは、いくらも歩けぬぞ?」
 少し恨めしげに、長蘇はそう言う。藺晨は笑った。
 「歩けずともよい。馬車で行けるところは馬車を使う。車が通えぬ道ならば、馬で行くか、輿を雇うか。それも駄目ならば、わたしが背負ってやってもよい」
 ちら、と上目遣いで長蘇が藺晨を見る。
 「途中で、病に伏すやも知れぬ」
 「やも知れぬだと? 間違いなく寝込むに決まっている」
 苦笑いして藺晨は言った。
 「だが、それが何だ? わたしは医者だぞ? 何を案じることがある? 病めば治してやる。治れば旅を続けられる。それだけだ」
 長蘇は眉を寄せ、困惑している。
 「わたしが尋ねているのはひとつだ。お前が、行きたいか、行きたくないか、それだけだ。お前が望むなら、どこへなりと連れていってやる」
 「わたしには、物見遊山に興じている暇など・・・・・・」
 歯切れの悪い口調で、長蘇がそう言った。
 「ここで愚図愚図と寝たり起きたりしていたとて同じことだ。どうせ、一年や二年で果たせる宿願でもあるまい? 臥薪嘗胆は結構だが、同じ時を費やすなら楽しまねば損だ」
 「わたしは・・・・・・」
 ほんとうは。
 長蘇の答えなど、初めからわかっている。
 行きたくないはずがないではないか。
 どのみち、人並みには生きられぬのだ。そして、ひとたび宿願成就に向かって走り出せば、もう自分のための時間など持つこともかなうまい。
 せめて、それまで。
 なに、思い切って出かけてしまえば、案ずるより産むがやすしだ。宿願達成のための布石を打つもよし、林主帥の生前の足跡をたどるもよし、物見遊山もこれまたよし。
 長蘇の行きたいところ、見たいもの、訪ねたい相手、すべて叶えてやりたいと藺晨は思う。
 「どうして」と長蘇が尋ねた。どうして、自分のような厄介者を連れて、旅をしようなどと思うのかと。
 「決まっている。旅には道連れがあった方が面白い」 
 藺晨はそう答えた。
 「それも見目麗しい相手に限る。美女であれば申し分ないが、打てば響くような、目から鼻に抜ける女を、生憎わたしは知らぬのでな。この際、男でも構わん。多少手のかかる病人であっても、幸いわたしは腕利きの医者と来ている。なにか問題があるか?」
 立て板に水のごとくそう言うと、長蘇は半ばあきれたような顔をし、それから、ようやくはんなりと微笑んだ。
 「ならば―――-、つきあわぬこともない」
 少し面映ゆげに、長蘇は答えた。
 「好!」
 藺晨は扇子で自分の膝を打つ。
 「では、早速支度にとりかかるのだな。入り用のものはなんでも調達してやるゆえ、善は急げだ」
 長蘇の気の変わらぬうちに、琅琊閣という鳥籠から連れ出してやるのだ。
 飛べぬ翼であっても、広い空の下で存分に広げさせてやりたかった

 江湖の風は、きっと長蘇に力を与えるだろう。
 いつか、この手から羽ばたいて行く、その日のために。

 庭から吹き込んだ春風に、長蘇が詩をしたためた紙がはたはと浮く。
 さっきの続きは、こうだ。

    遠樹曖仟仟
    生煙紛漠漠
    魚戲新荷動
    鳥散餘花落
    不對芳春酒
    還望青山郭

 長蘇の痩せた頬が、少し上気している。
 既に心は、江湖の空へと飛んでいるのかもしれぬ。

    遠樹は曖として仟仟たり
    生煙は紛として漠漠たる
    魚戯れれば、新荷の動き
    鳥散ずれば、余花の落つ
    芳春の酒に対はずして
    還つて望む、青山の郭

 江湖の春に遊べば、固く凍った魂も、息を吹き返すに違いない。
 かつてのように。
 朗らかに笑うであろう長蘇を想って、藺晨もまた、笑みをこぼしたのだった。


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~ Comment ~

>>ymkさま

漢詩の素養なんてゼロです!!!
高校の授業で長恨歌ならった程度の、ごく普通の知識です。
漢詩とかことわざとか引用するときはぜーんぶネットから拾ってくるんですよーww
だから使い方があってるかどうかなんて、さっぱりわかってませんw
雰囲気だけ借用するのです(^^;;;

本当に、長蘇の儚さと藺晨の包容力あっての藺蘇ですよね。
それでいて、この二人はポンポンと言葉の応酬をしあう。
遠慮がないんですよね。でも、思いやりや心遣いはある。
靖蘇は互いに遠慮しあってるもどかしさがよいのですけどねー(^^;

長蘇の手、ですかー。
難しそう・・・・・(^^;;;

>>ymkさま

追伸。
コピー本の第二弾「白月」配本中です。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。
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