琅琊榜

琅琊榜西遊記 10 (『琅琊榜』)

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なんと気づけば支部さんでの100本めですwwww ←バカ!?

 「長蘇。なんとかせよ」 
 ずかずかと梅長蘇の臥せっている臥室へやってきた藺晨が、床榻の傍の椅子にどっかりと座り込んだ。
  今朝がたようやく目を覚ました梅長蘇は、まだ横になったままで、景琰から無理矢理かゆを食べさせられているところであった。景琰が口元へ差し出してきた蓮華を慇懃に手で制して、藺晨の顔を見上げる。 
 「どうした?」
 そう問うと、藺晨が大袈裟なため息をつく。
 「毒蛇に魅入られて困っている」
 不思議そうに梅長蘇が目を瞬くと、景琰が少し笑った。
 「兄上がすっかり藺閣主に心酔なされてな」
 「誉王殿下が? 藺晨に?」
 ぷっ、と思わず梅長蘇は吹き出した。藺晨はますます不機嫌な顔つきになる。
 「あの莫迦めが、蘇宅へ何を送りつけてきたと思う。巨大な太湖石を十もだぞ? 琅琊閣の庭に飾れと言うのだが、あんなものを琅琊山へ運ぶ手間を考えてもみよ。気に入らねば漬物石にしてくれてよいと言うが、いったい何千人分の漬物を漬けよと? 蘇宅前で炊き出しでもすればよいのか?」
 辟易した様子の藺晨に、梅長蘇は笑いをこらえきれない。
 「しかし、藺晨。そんなものをいつまでも蘇宅に置いておかれては困る。やはりお前が担いででも琅琊閣へ引き取ってくれねば」
 「冗談ではない。全く、ほんの気まぐれにちょっと甘い言葉をかけてやったのが間違いのもとだ。わたしとしたことが」
 藺晨は、扇子で自分のこめかみを叩いた。
 そこへ。
 「藺閣主! こちらにおいででしたか」
 蘇宅へ梅長蘇の着替えを受け取りに行っていた戦英が、密室から顔を出して慌てたように言う。
 「早くお戻りくださいと黎綱どのが。誉王殿下が首を長くしてお待ちだそうです。閣主がお相手して下さらねば、我々が文句を言われて困っていると嘆いておいででした」
 密室から出てきた戦英が、藺晨の背を押す。
 「莫迦を言うな。わたしを人身御供に差し出す気か。般弱ならばともかく、なにゆえあの毒蛇の話し相手をしてやらねばならんのだ」
 藺晨は渋ったが、忽ち戦英に密室のほうへ押しやられていった。

 景琰と梅長蘇は、呆れてその様子を見ていた。
 景琰が笑って梅長蘇へ視線を戻す。
 「邪魔が入ったが、さあ、今少し召し上がられよ」
 もう一度、粥を掬おうとする景琰に、梅長蘇はかぶりを振った。
 「いえ。もう充分に頂戴いたしました。それより殿下。烈将軍から伺いましたが、次の台本は殿下がお手ずから脚本を手がけられるとか」
 「うむ。蘇先生もこの状態では筆をとることさえ難しかろうからな」
 梅長蘇はすこし申し訳なさそうな顔をした。
 「脚本は進んでおいでですか」
 「うむ。蘇先生のように一晩でというわけにはいかぬが」
 「申し訳ありません。殿下にそのようなご苦労を」
 悄然と睫毛を伏せた梅長蘇の肩を、景琰はそっと撫でてやる。
 「気に病んではならぬ。体に毒だぞ」
 そう言われて、梅長蘇はすまなそうに微笑した。
 「配役は?」
 「実は、我こそはと申し出る者が多くて選別に難儀したが、夏冬があまりに強く懇願するゆえ、あれに白骨夫人をやらせようと思う」
 事もなげに言った景琰に、梅長蘇は眉をひそめた。
 「夏冬どのに? 白骨夫人を?」
 景琰が首を傾げる。
 「―――問題でも?」
 「ああ、いえ……」
 夏冬の白骨夫人を想像して、梅長蘇は幾分げんなりする。自分ならば、隽娘と言ったか、童路の新妻あたりを推したいところだ。あれは般弱の師姐だと聞くが、般弱よりはよほど色香も芝居心もありそうだ。あるいは、いっそ越貴妃でもよいとさえ思う。
 「それで、夏冬の推薦で、夏江に黄袍怪を頼むことになった」
 「夏首尊!?」
 また面倒くさい男を……、と梅長蘇は景琰の人選に呆れる。
 「うむ。なんでも夏江は夏冬が舞台に出ることを猛反対したとかで……」
 「自分も共に出るならば構わぬと?」
 「まあ、そういうことらしい」
 やれやれと溜息をつきつつも、懸命に次の舞台の準備を進めている景琰を微笑ましく思う梅長蘇であった。



   * * *



 「小殊、殿下のおっしゃる通り、絶対に無理はならぬぞ」
 蒙摯が幾度も念押しするのに業を煮やして、梅長蘇は憤然と鼻息を吐いた。
 「蒙大哥。わたしはこう見えてももとは武人だ。武人が主のために身体を張るのは当たり前のこと。それすらさせてもらえぬのなら、生きている甲斐もない」
 顎をあげてそう言い放つと、蒙摯もさすがに困り果てた様子だ。
 「頼むからそう駄々をこねてくれるな。その主である殿下が、当分は身体を休めよとお命じになっておいでなのだ。主命に背くなどもってのほかだぞ、小殊」
 「……」
 蒙摯に言いくるめられるのは癪であったが、筋が通っているだけに返す言葉の見つからぬ梅長蘇である。
 そこへ、参内していた景琰が帰ってきた。どこから採ってきたのか、両手いっぱいに花を抱えた飛流も一緒だ。
 「殿下。お帰りなさいませ」
 牀台に半身を起こしていた梅長蘇が一礼すると、景琰が目を細めた。
 「本復には程遠かろうが、随分顔色もよくなったようだ」
 「色々ご迷惑をお掛け致しましたが、どうやら立ち稽古に間に合いましょう」
 梅長蘇は微笑んだが、景琰は眉根を引き締めた。
 「いや。そなたはいまだ病の身。稽古場へ入ることは罷りならん」
 懐から台本を出して見せながら、景琰は言った。
 「わたしが毎日、ここで読みあわせの相手をいたすゆえ、心配は要らぬ」
 「殿下……」
 少し頬を染めた梅長蘇の傍らで、蒙摯が陽気な声を上げた。
 「殿下。わたしもご一緒いたしますぞ。飛流も蘇哥哥の稽古につきあうであろう?」
 「うん!」
 すっかりやる気になっている蒙摯と飛流に、梅長蘇はがっくりと肩を落とした。
 「―――気の利かぬ者たちめ……」
 梅長蘇の微かなつぶやきを知らぬげに、景琰はにこやかに蒙摯の話し相手をしている。
 (人の気も知らずに……)
 苦笑いしながら、梅長蘇は景琰の横顔に見とれていた。




   * * *


 
 梅長蘇が稽古場に入れてもらえぬ間に日々は過ぎ、やがて、上演の当日を迎えた。
 「師父。よくお似合いです!」
 楽屋としてあてがわれた部屋で、夏冬が真面目な顔で夏江を誉めたてる。
 「おだてても何も出ぬぞ」
 むっつりとした表情で夏江は言ったが、その実、悪い気はしていないようだ。
 「見ておるがいい、誉王殿下を盛り立てるため、此度はわしが靖王の悟空を食ってやるわ」
 にやりと笑う夏江に、夏冬は肩をすくめた。
 「師父が悪役ぶりを発揮してくれればしてくれるほど、三蔵と悟空の絆はより深く強くなるに違いないわ。『西遊記の全て 第三巻』も、きっと充実した内容になるはず!」
 「何か言ったか、夏冬」
 じろりと夏江に見とがめられて、夏冬は慌てて顔を引き締めた。
 「何でもありません、師父。今日は師父の名演技を拝見し、勉強させていただく所存です」
 「うむ。わしとて初舞台ではあるが、伊達に長く生きてはおらぬ。人生即ち芝居のごときもの。儂の役者魂を、そちに伝授してくれようぞ」
 「はっ!」
 懸鏡司主従は、それぞれの思惑を胸に、やる気をみなぎらせていた。




   * * *




―――次回予告―――


 「天界では専ら噂になっています。三蔵法師は石猿に懸想しておるのだと」
 「根も葉も無きこと、どうか悟空にお咎めのなきよう」
 「師父に危害を及ぼす者を誅したことに、悔いはありません」
 「悟空よ、そなたのような不心得者を側におくわけにはゆかぬ。今日を限りに破門する!」

 三蔵と悟空の間に亀裂が!?
 ふたりの運命やいかに!?
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~ Comment ~

祝!100本!!

遥華さま

100本目の作品、おめでとうございます~!
今後も、遥華さんには、私たち読者の「萌と腐」に、明るい未来を切り開いていっていただきたいです!!(拍手~)

晏大夫、盲点でしたか?(笑)
ひそかに髪飾りとかオシャレだし、いつも仏頂面で口も悪いけど腕は極上だし、あの渋面がたまーに笑ったところなんか、激しく萌えますよ~(←病気)
あんなに気難しそうでいて、歳の離れた妻には激甘…だったりしたら、萌と腐以外の何物でもないっ!!!(←ホントに病気)

宗主は結局…幸せなんですねえ。
他に楽しみのない、変態さん。
いいのか景琰? 相手はドМのド変態だよ~?

胡歌さん、もうすぐアメリカ行きですね。
今からもう、心に穴が…。
ええ、私も、実物胡歌さんの雄っぱいに、目が点になったクチです。
あれ絶対、詐欺ですよね~~。

誉王殿下に懐かれちゃった、藺晨の未来は!?
下心満載の冬姐と、夏主尊の見せ場は!?
そしてどうなる、三蔵と悟空!

明日も楽しみにお待ちしております。

>>Rintzuさん

ありがとうございます!!
まさかこんなに早く100本達成とは(^^;;;;;
「萌と腐」……、恐ろしいwww

宗主、幸せそうですよ。
宗主がいきすぎた変態でも、景琰が鈍感なので丁度よいのですw

胡歌さん、ほんとに頑張ってほしいです。
枯れ枯れ詐欺にハマったわたしですが、
胡歌さんご自身は健康に気をつけてしっかりお勉強して
元気に帰って来ていただきたいですね!!
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